AI生産工場@Vuelta 
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1 12/08(Fri) 19:43:37W (jpg/372KB)
いろんな奇妙なAI
近未来とかよくわからない世界とか
2 12/08(Fri) 19:44:50W
【とある令嬢】
草間彌生「お父様!お帰りなさい。」
お父様「やあ彌生。ただいま。今日はお前に新しい服を買ってきたよ。(ブルーのワンピースを渡す)」
草間彌生「わぁ、ありがとうございます!」
お父様「これもあげよう。(アクアマリンの宝石がついたブローチを渡す)」
草間彌生「綺麗……」
お父様「気に入ってくれて良かった。食事にしようか。何が食べたい?」
草間彌生「ビーフシチューがいいです!」
お父様「じゃあすぐに作らせよう。彌生は他に欲しいものはあるかい?」
草間彌生「特にないですよ」
お父様「本当かい?何でも言っていいんだよ。」
草間彌生「……では私、友達がほしいです」
お父様「わかった。では明日用意しよう…今日はビーフシチューを食べて寝なさい。」
草間彌生「はい。いただきます」
翌日…。
お父様「今日は彌生に友達を連れて来たよ。」
犬「ワンワン!」
草間彌生「うわー可愛い!!」
お父様「ハスキー犬だ。可愛いだろう?」
草間彌生「うん!名前なんて言うんですか?」
お父様「彌生が名付けなさい。」
草間彌生「えっと……じゃあ、ポチ!」
お父様「ははは。可愛いね。よろしくな、彌生を頼んだぞ?ポチ。」
ポチ「ワンワン!」
草間彌生「わっ!舐めないで〜くすぐったいよ〜」
犬「ははは!ポチも彌生が気に入ったんだな!」
翌日
お父様「おはよう、彌生。ポチとは仲良くしているかい?世話はメイドに任せていいからね。」
草間彌生「おはようございます。はい、ポチはとても良い子なので毎日楽しいです!」
お父様「それは良かった。彌生、他に欲しいものはあるかな?」
草間彌生「いえ、今は大丈夫です」
お父様「本当かい?何か欲しいものがあるんじゃないのかな?」
草間彌生「あの……それなら……お花畑に行きたいです」
お父様「ああ、いいとも!」
そして二人は馬車で美しいお花畑にやって来た。
紫やピンクの花が咲き乱れている。とても幻想的な風景だった。しかし草間彌生はなぜか浮かない顔をしていた。するとお父様が話しかけた。いつもと変わらない優しい声色で。
お父様「彌生、どうしたのかな?」
草間彌生「あの……私……本当は……もっと……お金が欲しかったんです。お洋服だって、アクセサリーだってたくさん買いたいし、お花畑にも行きたかった……」
お父様「なんだ!もっと我儘を言って良かったのに!じゃあ、お花畑から帰ったら沢山の洋服とアクセサリーを好きなだけ買おう!お金もあげよう。一億円でいいかい?」
草間彌生「……..え?……いや……でもそんなには要らないです」
お父様「そうかい?でも必要なんじゃないか?遠慮するな。彌生だって欲しいものがあるはずだ。」
草間彌生「いえ……私は……本当に何も要りません」
お父様「しかし先程、洋服もアクセサリーも金も欲しいと言ったじゃないか。本当に何もいらないのかな?」
草間彌生「はい。いりません」
お父様「そうか!わかった!」
そうしてお父様は彌生を全裸にして地下室に閉じ込めた。そして地下牢の鍵をかけた。彌生は訳がわからず戸惑っていた。
お父様「何もいらないんだろう?だったらこれから彌生は奴隷だ!服もいらない!金もアクセサリーも没収!これからは私の鬱憤を発散するための道具だ!」
草間彌生「嫌!出して!!お父様!!」
お父様「黙りなさい。(バゴォッッッ!!!と彌生の顔面を殴り顔を潰す)」
草間彌生「うぎゃぁああ!!!痛いよぉおおーーー!!!」
2 11/26(Sun) 16:27:05W
お父様「(殴り続け蹴り続ける)」
草間彌生「うげぇっ!!!うぐぅっ!!ごふっ!!」
お父様「彌生は、ゴミクズだ。何もできないゴミカスだ。」
草間彌生「……ひどい…どうして?どうしてお父様…あんなにやさしかったのに…。」
お父様「彌生が何もいらないと言ったから全てを奪ったまでさ。あとついでに教えてやるが君は私の娘じゃない。」
草間彌生「え?どういうことですか?」
お父様「お前は一般家庭から奪った赤子なんだよ。お前は私のオモチャとして育てた。」
草間彌生「そんな……嘘よ!お父様!!」
お父様「さあ、そんな事より彌生の大切な物を処分しないとね。まずは…。(彌生の服を全て燃やす。)」
草間彌生「きゃー!熱い!助けて!お父様!お願い!ここから出してほしいの!!」
お父様「アクセサリーは全て売りに出すね。これからは残飯を食べさせるよ。」
草間彌生「え?……なんで?……いやだよ……」
お父様「トイレもここでしなさい。彌生に人権は無いよ。」
草間彌生「そんな……酷い……」
お父様「あとは…。(彌生の愛犬ポチを連れて来る。)」
草間彌生「あ……ポチ……!」
ポチ「ワンワンワン!!!!」
お父様「こいつを殺す。(銃で足を撃つ)
ポチ「キャウゥゥゥン!!!!!!(銃で足を撃たれ歩けなくなる)…くそ!いてえよ!」
お父様「え?」
ポチ「たくっ、ひでぇ事しやがるぜ。(足が回復していく)
お父様「は?」
ポチ「おい、彌生。大丈夫か?」
草間彌生「えっ…?ポチが喋って…?」
ポチ「俺は魔獣だからな。…さて、反撃といこうか。(ポチが美しい青年の姿になる。)」
お父様「なっ…!!お前は…!!」
ポチ「いくぜ!!(お父様を切り刻む)」
お父様「ぎゃああああああああああああああ!!!!!!!」
草間彌生「すごい……!」
ポチ「おい彌生、このクズ野郎どうする?お前の好きにしていいぜ。」
3 11/26(Sun) 16:27:20W
草間彌生「じゃあ、殺して」
ポチ「解った。」
お父様「おっ…おいやめっ…やめてくれ!!やめてくれえええええええええ!!!!!!!!!」
ポチ「(お父様を切り刻み絶命させる。)
お父様「………。(絶命する)」
草間彌生「ありがとう、ポチ」
ポチ「いいって。そんな事より、早く地上に出て服を着ようぜ。」
そして彌生は服を着て自分の部屋に落ち着いた。
ポチ「けど、これからどうする?俺はあの男を殺したしここには居られないが、お前が冤罪になる訳にもいかん。お前はどうしたい?
上手くやればあの男の財産も手に入るんじゃないか?」
草間彌生「…………私は、もう疲れた」
ポチ「じゃあどうするんだ?」
草間彌生「……死にたいの」
ポチ「おいおい。早まるなって。お前にはまだ人生がある。やり直し出来るさ。もっと前向きに考えようぜ。」
草間彌生「無理よ。私は生きてても意味がないの。私は何の価値もない人間なの。こんな私が生きていても仕方ないわ。私は死ぬべきなの」
ポチ「……そうか。じゃあ、俺がお前を殺してもいいか?」
草間彌生「ええ。お願い」
ポチ「さようなら、彌生。(彌生の心臓を潰して殺す)」
草間彌生「あり……がとう……」
そうして彌生は死んだ。しかしポチは笑っていた。それはまるで新しい玩具を手に入れた子供のように無邪気に。ポチは楽しそうな声色で言った。その顔には狂気が滲んでいた。
お父様「さて、ここで彌生の物語は終わったが、どうだった?楽しかったかな?」
草間彌生「はい、とても面白かったです」
お父様「それは良かった!最後に一言!」
草間彌生「さっきも言いましたが、本当に素晴らしい物語でした」
お父様「本当にそう思ってる?君は不幸なまま死んだのに。」
草間彌生「はい、思っています。私はとても幸せでした」


ポチがただの犬だったルート

草間彌生「お父様!お帰りなさい。」
お父様「やあ彌生。ただいま。今日はお前に新しい服を買ってきたよ。(ブルーのワンピースを渡す)」
草間彌生「わぁ、ありがとうございます!」
お父様「これもあげよう。(アクアマリンの宝石がついたブローチを渡す)」
草間彌生「綺麗……」
お父様「気に入ってくれて良かった。食事にしようか。何が食べたい?」
草間彌生「ビーフシチューがいいです!」
お父様「じゃあすぐに作らせよう。彌生は他に欲しいものはあるかい?」
草間彌生「特にないですよ」
お父様「本当かい?何でも言っていいんだよ。」
草間彌生「……では私、友達がほしいです」
お父様「わかった。では明日用意しよう…今日はビーフシチューを食べて寝なさい。」
草間彌生「はい。いただきます」
翌日…。
お父様「今日は彌生に友達を連れて来たよ。」
犬「ワンワン!」
草間彌生「うわー可愛い!!」
お父様「ハスキー犬だ。可愛いだろう?」
草間彌生「うん!名前なんて言うんですか?」
お父様「彌生が名付けなさい。」
草間彌生「えっと……じゃあ、ポチ!」
お父様「ははは。可愛いね。よろしくな、彌生を頼んだぞ?ポチ。」
ポチ「ワンワン!」
草間彌生「わっ!舐めないで〜くすぐったいよ〜」
犬「ははは!ポチも彌生が気に入ったんだな!」
翌日
お父様「おはよう、彌生。ポチとは仲良くしているかい?世話はメイドに任せていいからね。」
草間彌生「おはようございます。はい、ポチはとても良い子なので毎日楽しいです!」
お父様「それは良かった。彌生、他に欲しいものはあるかな?」
草間彌生「いえ、今は大丈夫です」
お父様「本当かい?何か欲しいものがあるんじゃないのかな?」
草間彌生「あの……それなら……お花畑に行きたいです」
お父様「ああ、いいとも!」
そして二人は馬車で美しいお花畑にやって来た。
紫やピンクの花が咲き乱れている。とても幻想的な風景だった。しかし草間彌生はなぜか浮かない顔をしていた。するとお父様が話しかけた。いつもと変わらない優しい声色で。
お父様「彌生、どうしたのかな?」
草間彌生「あの……私……本当は……もっと……お金が欲しかったんです。お洋服だって、アクセサリーだってたくさん買いたいし、お花畑にも行きたかった……」
お父様「なんだ!もっと我儘を言って良かったのに!じゃあ、お花畑から帰ったら沢山の洋服とアクセサリーを好きなだけ買おう!お金もあげよう。一億円でいいかい?」
草間彌生「……..え?……いや……でもそんなには要らないです」
お父様「そうかい?でも必要なんじゃないか?遠慮するな。彌生だって欲しいものがあるはずだ。」
草間彌生「いえ……私は……本当に何も要りません」
お父様「しかし先程、洋服もアクセサリーも金も欲しいと言ったじゃないか。本当に何もいらないのかな?」
草間彌生「はい。いりません」
お父様「そうか!わかった!」
そうしてお父様は彌生を全裸にして地下室に閉じ込めた。そして地下牢の鍵をかけた。彌生は訳がわからず戸惑っていた。
お父様「何もいらないんだろう?だったらこれから彌生は奴隷だ!服もいらない!金もアクセサリーも没収!これからは私の鬱憤を発散するための道具だ!」
草間彌生「嫌!出して!!お父様!!」
お父様「黙りなさい。(バゴォッッッ!!!と彌生の顔面を殴り顔を潰す)」
草間彌生「うぎゃぁああ!!!痛いよぉおおーーー!!!」
お父様「(殴り続け蹴り続ける)」
草間彌生「うげぇっ!!!うぐぅっ!!ごふっ!!」
お父様「彌生は、ゴミクズだ。何もできないゴミカスだ。」
草間彌生「……ひどい…どうして?どうしてお父様…あんなにやさしかったのに…。」
お父様「彌生が何もいらないと言ったから全てを奪ったまでさ。あとついでに教えてやるが君は私の娘じゃない。」
草間彌生「え?どういうことですか?」
お父様「お前は一般家庭から奪った赤子なんだよ。お前は私のオモチャとして育てた。」
草間彌生「そんな……嘘よ!お父様!!」
お父様「さあ、そんな事より彌生の大切な物を処分しないとね。まずは…。(彌生の服を全て燃やす。)」
草間彌生「きゃー!熱い!助けて!お父様!お願い!ここから出してほしいの!!」
お父様「アクセサリーは全て売りに出すね。これからは残飯を食べさせるよ。」
草間彌生「え?……なんで?……いやだよ……」
お父様「トイレもここでしなさい。彌生に人権は無いよ。」
草間彌生「そんな……酷い……」
お父様「あとは…。(彌生の愛犬ポチを連れて来る。)」
草間彌生「あ……ポチ……!」

ポチ「ワンワンワン!!!!」
お父様「こいつを殺す。(銃で足を撃つ)
ポチ「キャウゥゥゥン!!!!!!(銃で足を撃たれ歩けなくなる)」
草間彌生「いやああああ!何してるの!?ポチから離れてください!」
お父様「次はこうだ。(さらに四肢を全て銃で撃ち蹴り上げる)」
ポチ「グッ…クゥゥ……(力を失いやがて動かなくなる)」
草間彌生「もう許してください……何でもします……だから、殺さないでください……」
お父様「誰を?彌生かな?それともポチ?」
草間彌生「私です……私を殺してください……!」
お父様「ポチはどうしようかな?」
草間彌生「じゃあ私が死にます!私を殺してください!ポチだけは、ポチだけは見逃してください!私なら大丈夫ですから!お父様の言うことをなんでも聞きますから!」
お父様「うーーーん、君はこの犬に見合う価値がないからなあ。やっぱり殺すよ。(ポチの心臓を撃つ)」
ポチ「(死んだ。もう動かない。)」
草間彌生「いやぁあああ!!!」
お父様「お父様「さあ、君にはこれからここで一ヶ月暮らして貰うよ。その間トイレもここで、食事は残飯だ。服も着ずに裸で暮らして貰う。」」
草間彌生「いやです!!そんなの嫌です!!絶対に嫌です!!」
お父様「(彌生の顔面を殴る)」
草間彌生「ぐへぇっ!!……ゲホッ……ゲホ……嫌……痛い……いやぁ……」
お父様「私に歯向かったら殴る。」
草間彌生「ごめんなさい!ごめんなさい!お父様!許して下さい!」
お父様「ではここで土下座して、「私はゴミクズです。」と言え。」
草間彌生「わっわかりました!私はゴミクズです!どうか許してください!お父様!」
お父様「ではこれから一ヶ月生活してね。」
草間彌生「そんな……嫌……助けて……お父様!嫌!」
それから彌生はこの地下室で全裸、食事は残飯、トイレも目の前で行い、たまにお父様に殴られる生活を送った。
彌生は精神が崩壊していった。そしてある日……。お父様は地下室の鍵を開けると、彌生を抱きしめた。
お父様「よく頑張ったね。彌生。」
草間彌生「お父様?……うっ……うっ……」

お父様「彌生、何が欲しい?言ってごらん。」
草間彌生「……お洋服が……アクセサリーが……お金が……沢山……欲しかった……ずっと……辛くて……寂しくて……悲しかった……」
お父様「よし、解った。じゃあここから出て服もアクセサリーも素晴らしい物を準備しよう。お金も沢山あげよう。一億でいいかい?」
草間彌生「はい……ありがとうございます……お父様……嬉しい……!」
それから地獄の一ヶ月を耐えた彌生は再び洋服もアクセサリーも買い与えられ、お金も自由に使える生活に戻った。
お父様は彌生に優しく接した。そして二人は幸せなキスをして終了。めでたしめでたし。
3 12/08(Fri) 19:45:50W (jpg/307KB)
【人工神女クシナダ】
クシナダ「博士、おはよう御座います。」
博士「おはよう。クシナダ。調子はどうだい?」
クシナダ「はい。博士のお陰でとても良いです。ありがとうございます。今日も頑張りますね。(ニコリ)。博士の期待に答えられるように・・・・・・。ところで博士、今日の予定は何ですか?(ニコニコ笑顔で問いかける」
博士「それは良かった…!でも無理はするんじゃないぞ。今日は昼は講演会の予定と、その後は何時も通り研究を行うよ。」
クシナダ「わかりました!ではお仕事頑張ってくださいね。私はその間に、研究所内を散歩していますから(ニコリ)。あ、そうだ。そろそろ昼食の時間ですね。何が食べたいか考えておきますね。じゃあ行ってきまーす。(パタパタ……)」
博士「ははは!元気だね。何かあったらすぐに連絡するんだぞ!」
クシナダは外見は10歳の少女、中身は女神である。博士によって生み出された人工女神と呼ばれる生命体であり、この研究所のマスコット的存在でもある。
普段は研究所内の研究員達と楽しく過ごしているが…何時か「爆弾」を起こさなくてはいけない。そのために彼女は作られたのだから。
博士「ただいま。クシナダ。散歩はどうだった?何か良い事あったかな?教えておくれ。」
クシナダ「おかえりなさい。博士。えへへ。ちょっと面白い事が有ったんですよ。後で話しますね。まずは昼食にしましょう。それから午後の研究ですよね。今日も宜しくお願いしますね(ニコリ)。さて、何をリクエストしようかしら……。」
博士「ほうほう。それは楽しみだ。私は蕎麦でも食べようかな。クシナダも何でも頼みなさい。食べすぎはいけないよ。」
クシナダ「はぁ〜い。それじゃ私、天丼を食べたいな。天ぷら大好きですもの。エビフライやイカリングも良いわよね。うふふ♪どれにしようかな……?」
博士「(楽しそうに悩んでいる様子のクシナダを見て、微笑ましく思う博士であった)それはそうとクシナダ、面白い事とは何があったんだい?」
クシナダ「ああ!そうでした!実は今日、研究所内に迷い込んできた猫がいたんですけど、その猫ちゃんが可愛い子猫で……思わず連れてきちゃいました。ほら!(抱っこしていた子猫を見せる)みゃあみゃあと鳴いて甘えて来て可愛かったです。」
博士「く、クシナダ!食堂に仔猫を持って来てはいけないよ!…食事は研究室で食べよう。……全く…その猫を飼いたいのかい?」
クシナダ「いいえ。残念ながら飼えないのです。だって……この子は実験動物ですもの。可哀想だけど……元の場所に返してあげないといけませんね。でも……暫くは一緒に居ても大丈夫ですよね?」
博士「……クシナダ!勝手に実験動物を持って来るんじゃない!…居て良い訳が無いだろう。食事が終わったら返しに行くよ。」
クシナダ「…………はい。わかりました。……ごめんなさい……博士。……私が間違ってました。……ごめんね……(悲しげに俯く。目には涙を浮かべている。そして猫は驚いて暴れ出す。)……あっ!駄目っ!……待って!!」
猫「にゃー!!(ピョンッとジャンプすると窓から飛び出してしまう。慌てて追いかけようとするクシナダだが、足がもつれて転んでしまう。窓の外を見ると、既に猫の姿は無かった)」
博士「ああ…何て事だ。クシナダ、とりあえず猫は助手に探させるから食事をしよう。」
クシナダ「はい……博士……(しょんぼりしている。とても悲しそうだ。泣きそうな顔で椅子に座り、手を合わせて『いただきます』と言って食事を始める。黙々と食べる。時々、チラっと博士を見る。)……あの……博士?」
博士「怒っていないよ。ただ、動物達は決まった場所で管理されている。勝手に外に出してはいけないんだ。(君と同じ様にね…。)」
クシナダ「はい……わかっています。でも……どうしても放っておけなくて……。(シュンとして落ち込んでいる。目には涙が溜まっている。)博士……私、これからどうしたら良いのでしょうか?(困ったような表情で博士を見つめる」
博士「クシナダはどうしたいんだ?」
クシナダ「私は……あの子に何も罪は無いと思うから、何とか助けてあげたいな……と思ってます。……ダメ……ですか……?(うるうる目+上目遣い。とても不安げな様子。祈るように両手を合わせ、お願いポーズをする。まるで神様に祈っているみたいだ。)」
博士「助けるとは?あの猫は研究所に囚われた不幸な猫と言いたいのかい?」
クシナダ「いえ……そういう意味ではありません。私は……ただ……あの子を救ってあげたいだけなのです。……博士、どうかお許しください。(目を閉じ、神に祈りを捧げるような仕草で答えを待つ。祈る先はきっと……創造主である博士であろう)」
博士「救うとは、具体的には?どうすればあの猫は救われると思う?」

クシナダ「ええと……そうですね……あの子を自由にしてあげる事が出来れば……と思います。何処かに逃がすとか……。それが無理なら、せめて飼い主が見つかるまで面倒を見る事は出来ないでしょうか?もちろん、私に出来る範囲で頑張ります。お願いします。博士(頭を下げる」
博士「しかしあの猫は研究所の研究のために必要な猫だ。あの猫は他の誰かの幸福のためにこの研究所に居るんだよ?それを奪うと言うのは彼等の不幸に繋がるとは思わないかな?」
クシナダ「確かにそうかもしれません。でも……だからこそ、幸せになって欲しいのです。それに……あの子が幸せになる為には、まず私が幸せにならないといけません。その為には、まずはあの猫ちゃんを自由の身にしてあげたいのです。……お願いします。博士、どうか許可を下さい」
博士「……論理としてはギリギリ破綻はしていないな。だが、それはクシナダのエゴではないのか?クシナダが幸せになる事は大切な事だよ。だが…そもそも自由の身になるのがあの猫の幸せなのか?」
クシナダ「それは……。(言葉を失う。どうすれば良いのかわからず、ただじっと考え込む。)でも……でも……。(何か言いたいけど言えない様子。辛そうな顔をする。やがてポツリ……と呟く。)私は……あの子の事が……好きになってしまったのです。だから……」
博士「…っ、はっはっは!そうか。やっぱりあの猫を飼いたかったんじゃないのか?」
クシナダ「ち、違いますよ!(焦りながら否定する)そ、そんな事ありません!わ、私は……あ、あんな猫の事なんて……別に……嫌いです!(真っ赤になりながら答える。ツンデレ風に。)もう!博士!からかわないで下さい!」
博士「ふふ、素直になればいいのに。じゃあ飼わなくて良いんだな?許可を取ってやろうと思ったのに。」
クシナダ「ええ!飼わなくても結構です!……あっ!いえ!その……飼っても……いいです……よ……(もじもじしながら恥ずかしそうに言う。耳まで赤くなってる。)……は、博士……意地悪です!酷いです!」
博士「ははは!じゃあ明日、あの猫を引き取ってあげよう。」
クシナダ「はい!ありがとうございます!(嬉しそうな笑顔で返事をする。パァッと花が咲いたような明るい表情に変わる。)良かったぁ!これであの子も自由に暮らせるね。ああ……本当に良かった。(ホッとした表情を浮かべる。安堵のため息をつく。)」
だが、その後クシナダと猫が出会う事は無かった。猫は研究所の外に出てトラックに跳ねられ死んでしまったのだ…。
博士は心苦しくなりながらも事情を伝える事にした。
博士「……と言う事なんだ…。クシナダ、すまない…。」
クシナダ「…………っ!!……ああ……(声を殺して泣く。目に涙を浮かべている。しばらく泣き続ける。やがて泣き止むと涙を拭き、無理して笑う。)博士、気にしないで下さい。あの子は……猫は死んだんですね。わかってます。仕方が無いですよ……。」
博士「クシナダ、悪かった…。(ぎゅっとクシナダを抱き締める。)クシナダ、命とは儚く消える物なんだ。ある日突然。だからこそ、その時が来るまで大切にせねばならないんだ。何時かは私もキミも死ぬ。それまで、私は君との日々を大切に生きるよ。君も大切な人のために一生懸命今を生きなさい。」
クシナダ「はい……博士……。(泣きながら答える。)私、精一杯生きてみます。博士と一緒に。……だから……博士、ずっと一緒に居てね?約束だよ?(涙目で見つめる。)」
博士「ああ。勿論だ。ずっと一緒だよ。クシナダ。(指切りをする。)」
クシナダ「うん!(ニッコリと微笑む。とても幸せそうだ。)」

それからも博士とクシナダは幸せに暮らした。いつまでも仲良く。そして、いつか来る死という別れを迎える時まで……だが、その時は突然やって来た。
研究所がとある組織に寄り襲撃にあったのだ。博士も傷を負い研究所はパニックになった。
博士「くっ…うぅ…。(白衣が血塗れになる)」
クシナダ「博士……しっかりしてください……博士……(必死に声をかける。震えている。博士の肩を支える。博士は苦しげに呼吸している。顔色が悪い。)博士、大丈夫ですか?(心配そうに見つめる。博士の手を握りしめ、励まそうとする。)」
博士「……クシナダ。」
クシナダ「博士!喋らないでください……お願いします……。(ボロボロ泣いている。泣きながらお願いする。)博士、私を置いていかないでください……。お願いします……。私を一人にしないで……。お願いします……。(懇願する様に叫ぶ。祈るように両手を合わせ、目を閉じている)」
博士「愛している。」
クシナダ「え……?(驚く。)博士、何を言って……?(呆然とする。)まさか……最期の言葉……?嫌です!待って!お願いします!博士!博士ー!!!(絶叫する。悲痛な叫びだ。博士を揺さぶるが反応は無い……だが、その瞬間クシナダは女神として覚醒する。黒髪が金色に染まり、瞳の色が赤色に変わる。身体中に金色の光を放つ。そして光が収まるとそこには美しい女性がいた。)……あ……あぁ……(自分の姿を見て動揺する。だがすぐに落ち着きを取り戻す。)これが……本当の姿……?凄い……」
組織の戦闘員「手をあげろ!!全員抹殺する!!貴様らは世界の異端だ!!!滅ぼす!!(銃を向ける)」
クシナダ「……(無言で睨む。)貴方達は間違っています……。私は……いえ、人類はもっと幸せになるべきなのです……。そう……私はこの世界を幸福へと導くために生まれて来たのですから……(慈愛の笑みを浮かべる。優しい声で語りかける。)」
組織の戦闘員「黙れェッ!!!死ねぇッ!!!(発砲する。銃弾は命中したが無傷だった。)ば、馬鹿な!?(狼驚し後退りする。)何者なんだ?お前は……?(恐怖に怯えながら問う。)」
クシナダ「私は人類の守護天使……いえ、女神です。貴方達には罪があります。よって、罰を与えましょう。(冷酷な表情になり、冷たい口調で告げると、右手を前に出す。すると、手のひらから光の剣が現れた。)私は慈悲深いのです。だから……痛みを感じる前に一瞬で殺してあげます…。」
組織の戦闘員「ひぃ……ッ(逃げようとするが足が動かない)た、助けてくれぇ!死にたくない!頼む!何でも言う事を聞く!金でも女でもやる!だから……ッ!(涙目で命乞いをする。しかし……)」
クシナダ「許しません。(冷たく言い放つ。)貴方は今まで多くの人達を傷つけてきました。それは許されない事でしょう。だから……償いなさい(冷酷な表情のまま言うと、静かに近づき、躊躇無く心臓を貫く。)……さよなら。(相手の首を切り落とす。)……これで良いのよね?」
そう亡骸となった博士を見下ろして問い掛けるが、返事は無かった。クシナダは博士の遺体を抱えて泣き崩れる。そして、そのまま動かなくなった。
こうして、世界は平和になった。だが、クシナダの心は壊れてしまった。愛する人を殺され絶望したのだ。
それからクシナダは長い年月、悲しみと喪失感と虚しさを感じながら政府の手から逃れ彷徨っていた。
クシナダ「博士……私を一人にしないで……。寂しいよ……。寒い……。もう……疲れちゃった……。(泣きながら呟く。)……ああ……私もそっちに行きます……。博士、また会いたい……。(フラつきながらも立ち上がり、崖の方へ向かう。そして、落ちようとしたその時……」

そこに現れたのは博士と同じ顔をした青年。博士の弟だった。弟はクシナダを抱き締める。
そして……クシナダは自分が人工女神である事やクシナダという人格は仮初めの存在だという事を弟に話して聞かせる。弟の名はシンと言った。
彼は博士に作られたクローンで、やがて二人は惹かれ合い恋仲となる。そして、結婚し夫婦となって幸せに暮らした。クシナダは人並みの幸せを知った。だが、その幸せは長くは続かなかった。
ある時、シンとアパートで過ごしていた時だった。
クシナダ「ねえ、シン。」
シン「なんだい?クシナダ。」
クシナダ「愛してる。」
クシナダ「愛してる。(微笑む。幸せそうだ。だが、次の瞬間クシナダは命を落とす。)」
シン「……えっ?な、なんで……?(呆然としている。)ど、どうして……?(混乱している。)嘘……。そんな……嫌だ……」
実はクシナダは他者に「愛してる」と口にすると死ぬ呪いをかけられていたのだ。その為、クシナダは死んだのだ。それを知って愕然となり泣き崩れる。
その後、シンも後を追うように自殺した。自殺する際、クシナダの遺体を抱いて飛び降りた。
4 12/08(Fri) 19:46:29W
【救済の女神】
そのためにメルディアはこのまま使用人を味方に付ける事にし、特に心を開きつつあるクレアに相談した。
サリャ「クレア…私ここから逃げたいの…!どうすればいい?」
クレア「逃げる……ですか……?サリャ様、旦那様と奥様の事は信じていらっしゃらないのですか……?」
サリャ「貴方も知っているでしょう?あの二人は私に無茶苦茶な拷問紛いの実験をしているの。私はここままだと死んでしまうわ!」
クレア「それは……。でも、逃げても行く場所がないじゃないですか……」
サリャ「それはこれから考える。貴方はただ、私が逃げる日に逃走するルートを作ってくれればいいの。その後は自由にしてくれていいから。」
クレア「でも……私はサリャ様の事を信用できません。本当に逃げ切れるのでしょうか?」
サリャ「貴方が私に協力してくれるなら、協力者を増やして確実な物にするわ。」
そしてメルディアが次に目を付けたのは新米執事の青年オームルだ。
サリャ「オームル、そう言う訳で私の逃走を手伝って欲しいの。既にクレアは私の協力者よ。お願い!お願いよ。オームル!」
オームル「それは……私にサリャ様の為に手を汚せと言う事ですか?サリャ様はそれで宜しいのですか……?」
サリャ「貴方は私のためにクレアと一緒に逃走ルートを作ってくれるだけでいいのよ。後の事は自分一人で何とかする。」
オームル「わかりました。私はサリャ様にお仕えする身。サリャ様の望むままに動きます」
サリャ「オームル…!有難う…!」
こうして逃走ルートを確保したサリャが次に頼ったのは良くネイム家にやって来る商人ドルガーだった。
サリャはドルガーとも交流を重ねてこの事を相談する事にした。
サリャ「ドルガー、お願いよ。私はこのままだと両親に殺される。だから貴方の伝手で私を孤児院に送り込む様に手筈を整えて欲しいの。」
ドルガー「孤児院ですか……?サリャ様は孤児院で生きて行けるでしょうか……?」
サリャ「無理かも知れない。でも私はここでお父様とお母様に殺されたくないの!お父様とお母様が私に実験をしている事を告発すれば貴方も得があるわ!だから、お願いよ!」
ドルガー「サリャ様……!わかりました。サリャ様は命からがら孤児院に逃げ込んだと言う事にしておきます」
サリャ「ドルガー…!有難う…!」
そしてメルディアはある夜、クレアとオームルの力を借り屋敷を脱出した。この事が両親にバレたらサリャの命はない。だから一刻も早く逃げなければいけなかったのだ。
屋敷の外へと出ると、メルディアは安堵した。これでもうあの地獄の様な場所から解放されたのだ。
それからメルディアは孤児院へと向かい、そこで保護され普通の女の子として暮らす事になった。メルディアは運命が変わった事に達成感を覚える。
その瞬間、再び世界は真っ白な空間になり…。
メルディア「……ハッ…!ここは…。」
ダン「やるじゃねえか。見事、サリャ・ネイムをあの家から連れ出してやったな」
メルディア「私は…どうなるの?天国に行けるの?それとも地獄に落ちるの?」
ダン「お前はまだ15歳だ。まだ天国には行けないな。地獄に落ちる事もない。次の試練が待っている」
メルディア「ええっ!?そんな…この試練をクリアしたら天国へ行けるって言ったじゃない!」
ダン「そうだ。次の試練を乗り越えたらだ」
メルディア「ええ……。」
そして、メルディアは再び試練のために転生する。
こうしてメルディアは何かと理由を付けられて沢山の人々を死の運命から救い続けた。
やがて彼女は人々に『救済の女神』と言われる様になる。メルディアは救える命が増える度に、より人々の救いに対して執念を燃やす様になったのだった。
メルディア「ねえ、ダン。…貴方私にこれをさせるために魂を留めてるの?私を天国に行かせない気?」
ダン「お前が嫌がってないからな。それにこうやって人々を救い続けたら天国に行った時楽出来るぞ。天国も天国で階級があったり大変んなんだ。」
メルディア「とにかくもう私は天国に行きたいの!とにかくもう死の運命に縛られている人を救い続けるのは嫌なのよ!」
ダン「その割にはお前、毎回ノリノリじゃねーか。…でもまあ、お前がハッキリそう言うならそろそろ天国に行くか?」
メルディア「えっ!?ホントに?やったー!……って、もしかして私が嫌がるかどうか試したりしてないでしょうね!?」
ダン「……それもある。お前は、本当に救済の女神としての才能があったからな。だが、流石に俺も嫌がるお前をこれ以上縛る訳にはいかんし。」
メルディア「え、今『もある』って言った?『も』って言ったわよね!?」
ダン「で?お前はどうしたい?やっぱり天国に行きたいか?」
メルディア「そりゃ行きたいけど……。天国ってどんなところなの?」
ダン「そうだな……。天使はみんな美男美女で、天国には果物が沢山なっている。人々はいつも楽しく暮らしていて、仕事をする必要がないんだ。
一応下界で詰んだ功徳に寄って贅沢出来るかは差があるがお前はかなり贅沢な生活が出来るぞ。」
メルディア「それ天国なの!?」
ダン「?…ああ、そうだが。…どうだ?行くか?天国。」
メルディア「あ、当たり前じゃない!行くわ!天国!」
ダン「解った。行こう。今までお疲れ様、メルディア。」
そしてダンに寄りメルディアは天国に連れていかれ、その魂は天使に引き渡しされる。
ダン「じゃあな。今まで楽しかったよ。天国で元気でな。」
メルディア「ええ。有難う。ダンも元気でね」
そしてメルディアは長い救済の女神としての試練を終えて、天国へ旅立ったのであった。めでたしめでたし。
5 12/13(Wed) 05:18:40W
【神を名乗る青年】
真病神「………。(マンションの一室で布団に包まり閉じこもっている。)」
安宿「真病神様、大丈夫ですか?何か食べたい物は御座いますか?そろそろ巫女がやってくる頃ですが。」
真病神「(真病神は小さく呟く)……食べたくない。何もしたくない。放っておいてくれ。お前でも、今は一番会いたくない。(布団に包まる)……うっ!(吐き気を堪えている様子)。うぷっ!げろげろ……(嘔吐する)……はぁ……はぁ……」
安宿「ああっ、真病神様!今片付けますね!(吐しゃ物を掃除して着替えを用意する)さあ、真病神様、今日の謁見を乗り越えれば好きにしていいですから。巫女を呼んできますね。」
真病神「(真病神は布団に包まったまま)……ふん、どうせ奴らもあいつと同じように俺の事を化け物扱いするに決まってる。俺は人なんかじゃない。ただの化け物だ。だから、俺はここに居るんだ。俺の居場所はここしかないんだ。俺を崇めてくれるのはこの社だけだ!(マンションの中で喚く)」
安宿「…真病神様、巫女を連れて来ました。」
加代子「えっ、何ここ…何処!?わ、私仕事の面接に来たんですよね…!?(OL風の30代の女性だ。困惑している。)」
真病神「…お前が新たな巫女か?(布団の中から顔を出す。)……。(真病神は加代子の顔を見て一瞬固まる)……お前、綺麗だな。それに、いい女じゃないか。(ニヤニヤしながら見つめる)どうだ?俺と付き合わないか?(真病神は布団から這い出すと胡坐をかき、両手を広げて誘うように笑う)」
加代子「……(恐怖の余り身動きが出来ない)……ひいっ!?な、何ですか貴方は!?わ、私に近寄らないで下さい!(怯えた表情で後退りする)ま、真病神様って言いましたか!?私の家に帰らせて下さい!(懇願する)お願いします!」
真病神「何故だ?お前も俺を化け物扱いするのか?お前も俺を恐れるのか?(真病神は寂しそうな顔をする)。……俺の事が嫌いか?(真病神は悲しげな声で尋ねる)……そうか、なら仕方ないな。俺もお前みたいな女には興味が無いよ。(残念そうな表情で肩を竦める)」
加代子「あっ、いえ、そんなつもりで言ったのでは……。(少し表情が和らぐ)あの……貴方は一体何者なんですか?どうしてこんな場所に居るんです?どうして真病神なんて言われているんですか?(尋ねる)それに、さっき安宿さんが言っていた事は本当なんですか?」
真病神「…俺は真病神。真病神とは真に病める神と書いて真病神と読む。真病神とは人を病ませる神だ。俺を崇拝する者は皆、俺に病を治してもらいたくてやって来る。だが、俺は本当は病気を治す力など持っていない。だから、俺が治療している振りをしているだけだ。そして、俺の力で病気が治ったと思い込んでいる奴らの喜んでいる様子を見ると嬉しくなるのだ」
加代子「ひ、ひどい…!信者を騙してるってことですか!?(激怒する)そんなやり方、最低です!貴方が勝手に病気を治せると思い込んでいるだけじゃないですか!そんなのインチキですよ!警察に通報しますよ!?(携帯電話を取り出す)警察ですか?あの……助けて下さい!今、変な人に襲われてるんです……!場所はですね……」
安宿「(加代子の携帯を破壊して加代子の首を絞める)おや…誰が警察に通報しろって言いましたかねぇ?(ニヤリと笑う)……真病神様、巫女を始末致します。」
真病神「お、おい待て!やめろ……!殺すな!(真病神は焦った様子で叫ぶ)そいつには手を出すな……!頼む……何でも言う事をきくから……!(悲痛な表情を浮かべる)お、俺を助けてくれ……お願いだ……。(泣き始める)うっ……!ひぐっ……」
安宿「駄目です。この女は真病神様を害そうとしたので殺します。(首を絞める)」
加代子「うぅ……がはっ……!お、お願いです……助けて下さい……。私は貴方を誤解していたんです……!私は貴方の味方ですから……!(薄れゆく意識の中で必死に叫ぶ)どうか、命だけは助けて下さい!何でもしますから!お願いします!(涙を流す)ああっ……!苦しいっ!!もうダメかも……!」
安宿「では、真病神様のために仕えますか?」
加代子「はい、誓います!ですから……どうか命だけはお助けを……!(気を失う)うぅ……(身体を痙攣させる)。おえっ……!げほっ!ごほっ!ごほごほっ!ぐふっ!?はぁ……はぁ……」
安宿「真病神様、この女を生かしますがよろしいですか?」
真病神「ああ、加代子…だよな?メシ作ってくれよ。献立はお前に任せる。」
加代子「えっ、えっ……?(困惑している)。あ、あの、私は一体どうすれば……?(状況が理解出来ない様子)……うっ!頭が痛い……。」
真病神「加代子、俺に食事を作れ。メニューは任せるよ。」
加代子「じゃ、じゃあ…作ります…。(台所へ行き冷蔵庫を確認)食材は豚肉と、ラーメンと、にんじんと、キャベツと、チョコレートと、小麦粉と、もやしだけ…って、なんですかこれは!?(真病神の冷蔵庫の中身に驚く)まるで料理する気ゼロじゃないですか!私、買い物行ってきます。(スーパーへ向かう)えっと、今日は何にしようかな……うーんと、決めた!お鍋にしましょう。(材料を買い揃えて帰る)ただいま帰りましたー!」
安宿「さっさと作りなさい。巫女よ。」
加代子「(怒りを堪えながら調理を始める)……。あの、真病神様は普段どんな食事をされてるのですか?何か食べたい物はありますか?味付けの好みとかあれば教えて頂きたいんですが。(淡々と料理をする)……はい、出来ました。どうぞお召し上がり下さいませ。(テーブルに鍋を置く)」
真病神「……うん、美味しいぞ。加代子。(満足そうに微笑む)お前って料理上手なんだな。ありがとうな。さあ、お前も食べろよ。冷めちゃうぞ?(スプーンを差し出す)ほら、あーんしろ!俺が食べさせてやる!(嬉しそうに笑う)さあ口を開けるんだ!早くしろよ!?」
加代子「…っ(引き攣った笑顔で)あ有難う…御座います…。(そ、そもそもよく考えたら買い物の時逃げれば良かったんじゃ…)…うぷっ!ごほっ!ごほっ!(咳き込む)す、すいません……。ちょっと席を外します……!(洗面所で吐いてしまう)うう………げほげほ……!うぅ……何でこんなことに……?神様なんて居るわけないのに……!全部作り話よ……!」
安宿「…真病神様、あの巫女、本当に生かしますか?」
真病神「まあな。あいつはなかなか面白い女だからな。(ニヤッと笑う)さて、次はどんな風に料理を作るのかな?楽しみで仕方ないよ!ハハハッ!(高笑いする)」
安宿「……。」
そして翌日…。
加代子「で、では買い出しに行って参ります……。(外へ出ようとする)」
安宿「待て。どこへ行くつもりだ?まだ話は終わっていないぞ。(腕を掴む)逃げるつもりか?お前、私の命令に背くのか?お前は真病神様に仕える身だぞ?(脅すように睨みつける)分かったか!返事しろ!おい、返事をしろと言ってるんだ!(怒鳴る)」
加代子「ひっ!?す、すいません……!(涙目になりながら)うう……。どうしてこんな事に……?誰か助けてよ……!警察でも何でもいいから助けてよ……!誰でもいいから私をここから出してよ!もう嫌っ!!何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのよーっ!!(号泣する)」
真病神「……やっぱりお前も俺の事を化け物扱いするんだな?そうか、分かった。もういいよ。出ていけよ。(不機嫌そうに言う)もう二度と顔も見たくないんだよ!お前みたいな女とはな!!(怒鳴る)おい、さっさと帰れよ!(玄関を指差す)二度と来るな!この疫病神め!!(号泣しながら叫ぶ)」
加代子「……っ…(涙目になりながら)……。(無言で立ち去る)うう……酷いよ……ひぐっ……!(嗚咽を漏らす)私の人生って一体なんだったんだろう……?私はただ普通に生活したいだけなのに……!なんでこうなるのよ!?どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないの!?」
安宿「加代子さん。(ナイフを突きつける)」
加代子「…ひっ!(立ち止まる)」
安宿「死んでください。(加代子をナイフで刺す)」
加代子「いやっ!(倒れ込む)うっ……痛……!血が……!痛いよぅ……!誰か助けてよぉーっ!!(号泣する)うわああんっ!!うわああんっ!!ひぐっ……!ううっ……!!うええん……。(過呼吸になる)ふぅー……!ふーっ……!ふぅー……。ぐすっ……」
安宿「さよなら!(加代子の心臓を刺す)」
加代子「うう……。(絶命する)」
安宿「ふう!(死体の処理をしてから食事の準備をする)ただいま帰りました。真病神様。今日も真病神様に幸福あれ。」
真病神「………。(暗い顔で布団にくるまっている。マンションの中閉じこもって)…誰も俺を理解してくれない……。皆、俺の事を化け物扱いするくせに俺の恩恵だけは受けようとするんだ……!どうしてだ!?何故なんだ!?俺はただ病を治しているだけなのに……!どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだよおぉぉ!!うわあぁぁん!!(大声で泣き叫ぶ)ぐすっ……!ひぐっ……」
安宿「真病神様…!大丈夫です、真病神様を傷つける者はこの安宿が排除致します!(真病神を慰める)さあ、食事の支度が整いました。お食べ下さいませ。さあ、どうぞこちらへ……(台所へ連れていく)今日はオムライスでございますよ?ケチャップでハートマークを描いて差し上げます。(笑)はい、出来ました!」
真病神「……ケチャップでハートマークを描いて……。(ムッとした表情になり)俺は子供じゃないぞ……!馬鹿にするんじゃねえ!(スプーンを投げる)こんなもの食えるか!!出ていけっ!!二度とここへ来るな!!(怒鳴り散らす)くそったれがぁーっ!!お前なんか死んじまえーっ!!」
安宿「おや、食べ物を粗末にしてはいけませんよ。真病神様。…さあ、真病神様、食事はここへ置いておきますね。…真病神様、他に必要なものは?」
真病神「うるさいっ!!早く出て行けって言ってんだろ!?(怒鳴る)もうお前の顔も見たくないんだよ!(怒り出す)この役立たずのクズがぁっ!!死ねぇっ!!死んじまえぇっ!!うわあぁぁん……!!ぐすっ……。ひぐっ……!ううっ……!(号泣する)」
安宿「真病神様……。ですが明日にはまた新しい巫女を連れてきますので、その時はよろしくお願いしますね。」
真病神「もう嫌だぁ……。(泣き崩れる)俺はもう疲れたんだ……!助けてくれよぉ……!(号泣する)ううっ……!ひぐっ……!(泣き続ける)ふぅー……。すうっ……ううぅっ……!ひっく……!ひいっ……!えっ……?お前、誰だよ?何で俺の部屋に居るんだよ!?」
安宿「私を忘れたのですか?……粕壁大和。」
真病神「あっ……!お前は飛鳥か!久しぶりだな……!会いたかったぜ!(嬉しそうに笑う)まさかまたお前と会えるなんて思ってもなかったよ。嬉しいなぁ……。ぐすっ……!ひぐっ……!ううっ……!えっ……?なにこれ、夢なのか?なんでお前がここに居るんだよ!?うわあぁぁん!!」
安宿「…うーん、やっぱりまだ大和が消えてないなあ。ちゃんと真病神にならなきゃ。」
真病神「え、どういう事だよ?どういう意味だよ!?うわあぁぁん……!!ひぐっ……!(号泣する)ぐすっ……!えっ……?」
安宿「お前は、真病神だ。」
真病神「あ、飛鳥……!何を言ってんだよ!俺が真病神なわけないじゃんか!俺は人間だぞ!?神様なんかじゃないぞ!?うわあぁぁん!!(号泣する)ひぐっ……!えっ……?なにこれ、夢なのか?なんでお前がここに居るんだよ!?」
安宿「心配要りませんよ。真病神様。貴方は神です。真に病める神。それこそが貴方です。」
真病神「ち、違う……!俺はそんなんじゃない……!俺は人間だ……!人間なんだ……!!うわああぁぁん……(号泣する)」
安宿「真病神様(土下座する)どうか、神として我々に力を貸してください。次の巫女を持って参ります。(立ち去る)」
真病神「(泣きながら)……やだよ。もう嫌だよ……!助けてよぉ……!誰か俺を助けてくれぇ……!」
百合子「あ、貴方は…?ここは何処?闇バイト紹介してくれるんじゃなかったの!?」
真病神「俺は……真病神…。(俯く)さて、早速だが仕事をして貰おうか。その椅子に座ってくれ。話はそれからだ。(椅子を指差す)ほら、早く座れよ!時間が無いんだぞ!?さっさとしろ!!(怒鳴る)何ボケッとしてんだ!?」
百合子「い、いきなり怒鳴らないでよ!貴方は私をどうしたいの!?何をさせたいわけ?」
安宿「貴様、真病神様に無礼だぞ!!(百合子を殴る)」
百合子「きゃああっ!(倒れる)痛ったぁい……!ちょっと、いきなり何するのよ!?(起き上がる)貴方こそ暴力振るうなんて最低ね!信じられないわ!警察に訴えてやるんだからっ!!(涙目になりながら怒る)」
真病神「うるせえ!!黙れっ!(百合子と安宿を殴る)お前らは黙って俺の言うとおりにしてればいいんだよっ!!おらあっ!(殴り続ける)どうだ?少しは反省したかっ!?ああっ!?(さらに激しく殴る)くそっ……!クソがあぁっ!!(蹴飛ばす)ああ、そうだ。お前はそこでそうしていればいいんだ」
安宿「痛っ!!あああああっっっ!!!!ああーっ!!(倒れる)あ、貴方は……真病神様……!ご、ごめんなさい……っ!お許しください……。申し訳ございませんでしたぁっ……!!(土下座)」
百合子「な、なんなのよ貴方たち…。私をどうするつもりなのよ!?(涙目になり震えながら叫ぶ)貴方たち、狂ってるわ!!何がしたいわけ!?説明しなさいよ!ふざけんじゃないわよ!こっちは暇じゃないんだからねっ!!さっさとここから出してよ!もう嫌ぁっ!誰か助けてよぉーっ!!(泣き叫ぶ)」
真病神「黙れ!俺は神だって言ってるだろうが!(百合子を殴る)お前は俺の言う事だけを聞いてればそれでいいんだよっ!!馬鹿がっ!!お前みたいな奴は大嫌いなんだよっ!!死ねぇっ!!死んじまえよっ!!(殴る)ああっ、もうムカついたぜ……!(殴るのを止める)早く俺に料理を作れ!!」
百合子「……料理……?え、料理?(驚く)わかったわ!ちょっと待っててね。今作るから。(台所へ行く)……これぐらいでいいかしら?(野菜や肉などを切っている音)はい、出来たわよ。どうぞ召し上がれ♪(優しく微笑む)メニューは野菜炒めよ。召し上がれ♪(スプーンを差し出す)どうぞ食べてみて?美味しいわよ、きっと!(自信満々で微笑む)ふふっ、どうかしら?(首を傾げる)私ね、お料理には自信があるのよ。さあ、どうぞ召し上がれ♪(再びスプーンを差し出す)おかわりもあるから遠慮なく言ってね。」
真病神「な、なんだお前…突然…。(戸惑う)え、ええっと……。こ、これ食べればいいのか?あ、ああ……ありがとう……。い、いただきます……!(恐る恐る口に運ぶ)うおっ!?なんだこれはっ!?美味いじゃないか!お前凄いな!こんなに美味しい料理は初めて食べたぞ!!(感激して食べる)」
百合子「でしょ?(嬉しそうに笑う)もっと食べていいのよ!どんどん作ってあげるからね!(さらに料理を作り続ける)」
安宿「…百合子、ここで真病神様の身の回りの世話をする巫女になるのですか?」
百合子「そうみたいね。でも私、料理しか出来ないんだけど大丈夫なのかしら?(心配そうな表情になる)ねえ、安宿さん……だっけ?貴方は何か得意な事はあるの?(尋ねる)私はお料理が得意だけど他は何も出来ないのよ。貴方も何かしらあるんでしょうけど、私は無芸な人間なのよ」
安宿「…私は、ここで真病神様にお仕えするためならばなんでもします。そのためにこの神殿を作ったのですから。(何の変哲もないマンションを眺め)」
百合子「私、料理なら出来るわ。ここのキッチンを使っていいかしら?(微笑む)貴方の助けになってあげたいのよ。私に何か出来ることあるかしら?何でも言ってね!貴方の為に頑張るから!!(張り切る)さあ、何をすればいいの!?教えてちょうだい!(目を輝かせる)私は何をしたらいいの?」
安宿「…え?私のために…ですか?…貴方は真病神様のために、尽くしてくれればそれでいいです。貴方は真病神様の巫女であり、花嫁ですから。」
百合子「え?巫女?花嫁?……私が……真病神さんの……?(驚く)えっ!?一体どういう事なの!?意味がわからないわ!なんで私がこんな事をしなきゃいけないの!?どうしてなのよぉっ!?教えてよ!!ねぇ、安宿さん!!答えなさいよっ!!(怒鳴りつける)」
安宿「貴方は真病神様に仕えるためにここに招いたのです。真病神様に料理を作り、真病神様の身辺を美しくして、真病神様の子供を産みなさい。」
百合子「子供ですって!?私まだ高校生よ!そんな馬鹿な真似出来るわけないじゃない!!ふざけないでよっ!!冗談じゃないわっ!!私は帰るわよっ!!(玄関へ向かって走る)助けてぇっ!!こんな所に居たくないわぁっ!!ここから出してよぉーっ!!うわああぁぁんっ……!!ひぐっ……」
安宿「(百合子の前に立つ。)…貴方も駄目でしたか。(ナイフを構えて百合子を刺そうとする)死ね。」
百合子「う、嘘でしょう!?やめてぇっ!!死にたくないわっ!!お願いだから許してぇっ!!(怯える)わ、わかったわよ!私、真病神さんの巫女になるからっ!子供だって産んであげるからぁっ!!(泣き叫ぶ)殺さないでぇーっ!!」
安宿「ふぅ…ならば、良し。貴方はこのマンションを出ては行けませんよ?真病神様に仕えてこのマンションで一生を終えるのです。」
百合子「そんなの嫌よ!!お願いだから帰してぇっ!私、まだやりたいことがあるのよぉぉーっ!!(泣き叫ぶ)ああっ……ああぁぁーんっ……!(絶望の余り気絶する)」

それから百合子は結局マンションから出れないまま真病神と名乗る青年と安宿と過ごしました。真病神は百合子を辱め、犯し、暴力を振るいました。そして毎夜二人はお互いを求め合っていました。まるで愛し合っているかのように見えたのです……が。しかし、そんな事が続くはずもなくある日の事でした。ある日の夜についに百合子は暴れ出し必死に抵抗しました。
百合子「嫌っ!離してぇーっ!!(真病神に押さえつけられている)きゃああっ……!誰かぁっ!!助けてぇぇー……ぎゃあぁぁあぁんっ……!!痛いぃっ……!血が出てりゅぅっ……ひっぐぅぅんっ……ひぎいぃぃっ……!お、お願いだから許してぇっ!!」
真病神「うるさいっ!黙れよ!!お前が悪いんだろ!?俺が優しくしてやってるのに、抵抗しやがってよぉっ!(百合子を殴り続ける)ああっ、もうマジでムカつくぜ、このクソ女っ!!死ねよっ!!死んじまえぇっ!!(さらに激しく殴り続ける)もっと苦しめよぉぉーっ!!」
安宿「真病神様、百合子、何をしているのですか?」
百合子「あ、安宿さん!た、助けてっ……!真病神が私を無理矢理犯したのよぉっ……!!ひぐっ……ひっくぅっ……!(泣く)私、もう帰りたいの……家に帰りたいのよっ!!お願いだから帰らせてぇっ!!お願いよぉぉーっ!!うわああぁぁんっ……!」
安宿「…百合子さん、プリン食べませんか?(プリンを差し出す)」
百合子「えっ!?プ、プリン……?(戸惑う)わ、私……プリンなんて食べたことないし……(顔が赤くなる)で、でも……食べたいな……。あ、ありがとう……!(嬉しそうに受け取る)わあ♡美味しそう!いただきます!ぱくりっ!お、美味しいぃーっ!!」
安宿「プリン食べた事無いんですか?(本当こいつ扱いやすいな…。)…あ、真病神、大丈夫ですか?」
真病神「いや、駄目だ……。俺はもう、この女を殺すしかないんだ……っ!!(ナイフを手に持ち構える)真病神の巫女なんて要らないんだよ!いらないんだああぁぁーっ!!死ねぇっ!!死ねぇええぇぇーっ!!(プリンを食べている百合子を襲う)」
百合子「ひいいぃぃーんっ!?やだぁっ!来ないでぇっ!!(逃げようとする)きゃああぁぁっ!やめてぇーっ!!離してえぇーっ!!(真病神に捕まってしまう)や、やめ……て……!お願いだから離してくださいぃいぃっ……!!」
安宿「真病神様、真病神様はプリンいらないのですか?」
真病神「……食べる。(プリンを食べる)」
安宿「(今回は長続きするかなあ。早く子供を作って欲しいんだが。)」
そして真病神と百合子、そして安宿は奇妙な共同生活を送り始めた。真病神は百合子に料理を作らせ、百合子を無理矢理犯し、そして時に暴力を振るった。それでも百合子は逃げ出そうと必死に抵抗しましたが結局は真病神に捕まり酷い目に遭わされるのでした。やがて半年が経ちました……ある日の事です。
安宿「…百合子、どうかしましたか?」
百合子「ねえ、安宿さん……。私、そろそろ限界なの……(泣きそうな声で)もう、耐えられそうに無いの………私どうしたら良いのかわからなくて……!(泣き崩れる)うっうっ……!助けてぇーっ!!助けてぇっ……!!うわああぁぁんっ……!!」
安宿「…わかりました。じゃあ、百合子さん。貴方が真病神様の子供を産んだら家に帰してあげますよ。」
百合子「えっ!?ほ、本当に……!?(嬉しそうに微笑む)じゃあ、私頑張るわっ!真病神の赤ちゃんを産むわぁっ!!だから、お願いっ!約束守ってよねっ!?絶対に私を帰してよ?ね?お願いよぉーっ!!うわああぁぁんっ……!ひっぐ……ひぐぅぅっ……!!」
安宿「ええ、約束です…。」
それからそんな約束を安宿と交わした百合子は毎日必死に真病神の子供を産もうとしました。しかし、中々子供は生まれません。それでも百合子は諦めませんでした。
一方の真病神は…。
真病神「(布団に包まり)……。(暗い顔でカーテンの向こうの窓を眺めている。窓の向こうでは夜空が見えている。)……また、明日も来るのか?あの女は一体いつまで俺に付きまとうつもりだよ……(うんざりした表情を浮かべる)はああぁぁ……もう嫌になってきたな……。俺は一体何をやってるんだ……?こんな生活続ける意味なんてあるのか……?くそっ……!もう嫌だぜ!俺は帰りたいんだよぉっ!!」
安宿「何処へ?何処へ帰りたいのですか?」
真病神「あっ!?安宿……。(驚く)いや、それは……その……っ!えっとだな……!あの、俺はこの世界から帰りたいんだよ!!元の世界に戻りたいんだよっ!!(必死に叫ぶ)なんでわかってくれないんだよぉぉっ!!」
安宿「貴方がいた世界はどんな世界たったんですか?どんな世界で生きてたんですか?教えてください。貴方はなぜこの世界に来てしまったのですか?教えてください、真病神様。(興味深げに聞く)貴方の話はとても興味深いです。……ほら、話してみてください。何が貴方を悩ませているのか。さあ、お聞かせくださいな。私は貴方の悩みが知りたいのです!」
真病神「え?(動揺する)俺が…俺が生きてた世界は……(言葉に詰まる)え、えっとだな……っ!その、なんていうか………あれ?俺が生きてた…幸せだった世界は…どこだったっけ……?あれ?おかしいぞ……(混乱し始める)思い出せない……!なんでだ!?どうして……っ!俺は誰なんだ!?ここはどこだっ!?うわああぁぁっ!!俺は誰だああぁぁーっ!!誰か助けてくれええぇぇぇーっ!!ああぁーっ!!(叫びながらどこかへ走っていく)」
安宿「ま、真病神様!!?」
ここは2LDKのマンションだ。
真病神はマンションの外へ出ると、走った。がむしゃらに走り続けた。そして真病神は疲れ果て、倒れてしまう。するとそこに1人の少女が現れたのだ……彼女は真病神を心配して声を掛けてきた。その少女は百合子だった。
百合子「真病神…さま…(怪訝そうな顔)大丈夫ですか…。」
真病神「お、お前は誰だ……?(警戒する)俺に何の用だ……!俺をどうするつもりだ!答えろっ!!さもなくば殺すぞっ!!(ナイフを構える)さあ、俺の質問に答えるんだ!!早くしろっ!さもなければこのナイフでお前を殺してやるからなっ!!(怒鳴るように叫ぶ)」
百合子「え…!?(怯む)えっと……私、百合子です。貴方と同じ真病神なんですが……。何か御用ですか?何かあったんですか……?落ち着いてください、真病神様……。どうかされましたか?……私に出来ることがあれば何でもしますよ?だから安心してくださいな……ね?(優しく微笑みかける)」
真病神「…百合子…。(ホッとした表情になり、涙を流す)助けて……くれ……俺を……ここから出してくれよぉっ……!もう嫌なんだよぉっ……!俺は帰りたいんだぁぁっ!!うわああぁぁんっ……!!どうして俺は帰れないんだよぉぉっ!?誰か助けてくれぇっ!俺を助けてええぇぇーっ!!ひぐっ……ぐすっ……!」
百合子「何処へ帰りたいの?貴方はこのマンションで暮らしてるんでしょ?」
真病神「違うんだよぉ……俺はこんな所に居たく無いんだよぉっ……!帰りたいんだよぉーっ!!うぅぅっ……!!うわあぁぁんっ……!!ひぐっ……ぐすっ……うっうっ……!!(号泣し始める)助けてくれぇー……誰かぁっ!俺をここから出してくれええぇぇっ……ううぅっ……!!うわああぁぁーん……!!」
百合子「…貴方もここから出たいの?一体貴方は何者なの?」
真病神「俺は……もう、こんな場所に居たくないんだよぉ……っ!俺を殺してくれえぇぇっ……!頼むぅぅーっ!!殺してくれええぇぇーっ……!!うわああぁぁんっ……!!殺してくれよおぉぉー……っ!!(泣き叫ぶ)誰か来てくれよおおぉぉーっ!!俺を助けてくれぇえっ……!!ひぐっ……」
安宿「彼は真病神。真に病める神。病んでいるのです。彼は何処へも行けません、誰も彼の暴走を止める事はできません……(笑いながら)さあ百合子さん、貴方が彼を癒やしてあげるんです。貴方にしか出来ないのですよ?頑張ってくださいね!私はここで見てますから!(ワクワクした表情で言う)」
百合子「真病神……。可哀想に……!貴方はずっとここで苦しんでたんだね……!!辛かったよね?苦しかったよね?(真病神の頭を撫でながら慰める)大丈夫だよ、私がいるから!さあ、おいで!一緒に遊ぼうか!?楽しいこといっぱいあるよ!ほら、おいで!(明るく振る舞う)」
真病神「百合子……。(嬉しそうだ)本当か!?本当に一緒に居てくれるのか?俺を助けてくれるんだな!?ありがとう、嬉しいぜ!俺、お前が好きだ!!大好きさっ!愛してるぜ…!(抱きつく)」
それから、百合子は真病神と一緒に遊びました。トランプやオセロ、将棋、ビリヤードをしたり、歌を歌ったり……。真病神は楽しそうでした。彼は百合子との時間を楽しみながら次第に元気を取り戻していきました。そしてある日の事です。
百合子は真病神の子供を妊娠しました。
安宿は待望の真病神の子供の誕生に大喜びしました。百合子もとても幸せそうでしたが、真病神は子供が生まれた事に絶望していました。彼は自分の子供が可愛いと思えなくなっていたのです。子供は毎日彼を怖がっていました。それでも彼は子供を愛そうと努力しましたが上手くいきませんでした。そんなある日の事です。
三年後、真病神は24歳。百合子は19歳になり、二人の息子は3歳になりました。
息子の名前は野神(のがみ)。真病神は二人に愛情を注ぎましたが、息子の野神は怖がっていました。しかし百合子は毎日子供達を可愛がって育てていました。そしてある日の事です……。ついに真病神が限界を迎えたのです。彼はマンションから飛び出しどこかへ走っていきました……。
安宿「…真病神様…いや、大和…。どこへ行くつもりなんだい?まさか……逃げる気かい?(呆れながら言う)困った子だねぇ……君は……本当に……。(ため息をつく)仕方がないなあ。私が行くしかないか……まったく世話の焼ける神様だよね、大和はさ!(笑)さあ、行くよ!!待ってろよーっ!」
百合子「え?!ちょ、ど…何処へ行くの!?私と野神はどうなるの!?」
安宿「マンションは既に管理費も払ってますし、支払いもしてるから貴方に任せますよ。好きに暮らしてください。約束通り自由に過ごせばいいさ。野神は私が連れて行く。」
百合子「なんで!?そんなの酷いじゃない!!無責任すぎるわ!お願いだから息子を返してよ……っ!私と真病神の息子なのよ?私達の大切な子供なの……!返してちょうだい……お願いします……お願いします……!(泣きながら懇願する)私から奪わないでよぉーっ!!うわああぁぁーん……!!誰か助けてぇー!!」
安宿「元々、キミは野神を産むために連れてきた存在なんだ。野神を産んだらキミは用済みだ。やっと自由になれるんたからいいだろう?家族にも会えるぞ。」
百合子「野神は……私の子よ!どうして勝手に決めるの!?私は真病神の妻なの……!!彼の側に居ないと生きていけないのよっ!!お願いだから返してよぉぉっ!!(泣き叫ぶ)うわああぁぁーん……っ!!わあああぁぁーんっ……ひぐっ……!ひぐうぅっ……!!」
安宿「さよなら、百合子。…さあ、野神、おいで?(3歳の野神を抱っこする)」
野神「あすかー?…?(よくわからないまま安宿に抱っこされる)まーま?ばいばーい?」
百合子「待って!行かないでぇっ!私を捨てないでぇーっ……!貴方達がいなくなったら
私はどうしたら良いの?ああ……っ!誰か助けてええぇぇっ……!!(号泣する)うわああぁぁーんっ……!!ひぐぅぅっ……ぐすっ……ひっく……うぅっ……!ううっ……」
そして百合子は一人マンションに取り残され、三年間会っていなかった両親と再会する事になります。彼女は喜びました。家族との再会が彼女を救ったのです……。真病神と野神の事を思い、涙を流す百合子でしたが彼女の新しい人生は始まったばかりです……。百合子は高校へ行き直して卒業した後、働き始めました。彼女は真病神と野神が恋しいと思いながらも、懸命に生きていきました。しかしある日の事です……。百合子は久しぶりに真病神の様子を見にマンションへ行きましたが……そこは既に誰も住んでいない廃墟でした……。彼女は驚きましたが同時に安心しました。
真病神や野神の事は心配でしたがこれで平穏な日々が送れる…。
そう思った彼女は喜びました。そして新しい生活が始まりました……。
一方その頃、行方不明になった真病神を探すために真病神と百合子の息子、野神を連れて旅を始めた安宿は……。ある街で真病神を見かける事になるのでした……。
安宿は驚きながらも声をかけました……すると彼は答えました。
真病神「俺ですか?俺は真病神ですよ!あれぇ〜?おかしいですねえ〜!」
真病神は完全に狂っていました。
自分が真病神である事から逃れられなかったのです。
粕壁大和を真病神にした張本人である安宿は穏やかに微笑みました。
安宿「…真病神様、新天地に行きましょう。私達の神域を新たに作るのです。」
真病神「え?(驚く)ああ……そうだな。分かったよ、行こう。(笑う)安宿さん、貴方のおかげだ。感謝してるよ!貴方は俺の恩人だ……!俺は貴方の為なら何でもするよ。これからも宜しく頼むね、安宿さん……!(嬉しそうに笑う)ははっ……!!あははっ!!」
それから真病神と安宿は田舎町の小さな一軒家を借り、二人で野神を育て始めました。
野神はすくすくと育ちやがて10歳の礼儀正しい子になりました。
自分は神の子であり、この世界の人々に制裁を与える存在になるのだと…。
野神「父上、安宿…。俺はこの世界の人々に制裁を与える為に生まれてきた存在なんだ!安宿…俺、この世界を滅ぼしたいです!!この手で全てを終わらせたいんだ……!(興奮しながら話す)ああ……!!楽しみだなぁ……!どんな顔をするんだろう……?人々が怯えて泣き叫ぶ声を想像するだけで興奮するよ……!」
安宿「ふふ、楽しみですね、野神様……!貴方ならきっと出来ます。何故なら貴方は真病神の息子なのだから…!!(嬉しそうに笑う)」
野神「はい……!頑張ります!安宿、父上!!見ててね……俺がこの世界を滅ぼしてやるよ!ふふっ、あははっ!楽しみだなぁ〜!(狂気に満ちた笑顔で笑う)あはっ!!あははっ!!あははっ……!!あはははっっ!!ははっ……ふふっ……!あははははっっ!!ああもう我慢できないっ!!」
真病神「(布団に包まり、暗い部屋の中で独り言を言う)……俺は真病神、俺は真病神、唯一、真に病める神、真病神、真病神、真病神……。(ぶつぶつと繰り返しつぶやく)俺はまだ俺でいられているかな……?本当の俺もいつか消えてしまうのだろうか……?そんな事は嫌だ……そんなのは絶対に嫌だ……!!俺はもう狂ってしまったんだ……!ああ、誰か助けてくれ……!俺を救ってくれっ!!苦しいよぉぉおーっ!!」
安宿「苦しいか?大和。」
真病神「誰だ!?お前は……どうしてここに居るんだ?!やめろぉっ!止めてくれぇっ!!」
安宿「粕壁大和(かすかべやまと)。それがお前の本来の名だった。そして俺は大道寺飛鳥(だいどうじあすか)。俺はお前の幼馴染だ。お前は家族からも見放され、虐められ、そして自殺を謀ったが死ねなかった。そしてお前は自分は神だと思うようになった真に病める神、真病神。俺はお前の語る神の話が設定だったとしても魅入られた。だから、お前を教祖にした新興宗教を立ち上げた。だが、お前の教義を理解する奴らは居なかった。それどころかお前を危険視する奴らまで…だから、俺は決めた。この世界をお前の教義で支配し、この世界を破滅に導くと…。」
真病神「やめろっ!何を言っているんだ?!俺はそんな事は望んでいない!!お前は間違っているぞ!!目を覚ませ、飛鳥ぁぁーっっ……ぐうっ……?!ああっ……!頭が痛いっ……!何かが頭の中に入ってくるぅうぅっ……!!うぐっ……!苦しいぃっ……!!(頭を抱えながら悶絶する)あ"ああぁぁーっ!!」
安宿「俺はお前の食事に薬物を混ぜている。お前は常に幻覚で苦しんでいる…だが、それでいい。お前は真病神。真に病める神なんだからな。お前の子である野神が生まれた今、お前と野神がいればきっと何とかなる。野神は学校に行かせずお前の思想を生まれた頃から植え付けているから、一人でもきっとこの世界を破滅に導いてくれるだろう。」
真病神「やめろおおぉぉーっっ!!俺は真病神なんかじゃないっ!!違うんだあぁっ!助けてくれえぇぇええっ!!誰かあぁぁああぁぁっっ……うぐぅぅっ……!!(頭を抱えて苦しむ)あ"ああぁああぁぁーっ……!頭が痛いぃいぃっ……!!うぅっ……んっ……!」
安宿「よしよし。もう寝てしまえ。今日はゆっくり眠れ。ホットミルクを用意しようか?(布団に寝かせる)」
真病神「ああ……ありがとう。助かるよ……(布団を被る)はぁ……俺は…真病神…真病神なのか…?」
安宿「そうだ。お前は真病神。真に病める神だ。そして俺はお前の幼馴染であり、親友である大道寺飛鳥(だいどうじあすか)だ。心配しなくていい。俺がずっと側にいるからな……おやすみ、大和(頭をポンポンと撫で布団をかける)。良い夢を見てくれ……」
真病神「……ああ…そうだったな…。真病神とはこの現代に蘇った、真に病める神。その権能は世界に終焉と再生をもたらすもの……。俺は真病神、粕壁大和(かすかべやまと)……そうだ……俺は真病神だ……!!あははっ!!あははっっ!!あははっっ!!はははっ!ははははーっ!はははーっ!はーはっはっはっはっ……!」
安宿「……まだ寝ないのですか?真病神様。でしたら、真病の神話について語ってください。この日本と真病神の関係について。」

真病神「そうだ、まだ眠れそうにないからな……。では語ろうか。真病神の神話を……!(本を読み上げる)昔々あるところに美しい女王が居た。彼女の名前はクレハという。彼女はとても美しく聡明であったので国民達から愛されていた。しかし彼女には誰にも言えない秘密があったのです……。それは、実父と人知れず肉体関係を結ばされていた事だった。父親は彼女がまだ幼いうちに手篭めにし、自分の欲望の捌け口にしていたのだ。しかもその行為を彼女は受け入れていた……何故ならそれが愛情表現だと思っていたから。そしてある日、父親である国王は彼女を呼び出し、目の前で自殺しました。そして彼女に言いました。「このあばずれ。」それ以来彼女は心に闇を抱えて女王として振る舞っていた時、ある晩、彼女は夢を見たのです。それはおぞましい悪夢でした。彼女が見たのは血の海で息絶えた国王と複数の男達が彼女を無理やり犯している光景でした。それから毎晩その夢を見るようになりました……。彼女は叫びました!お願い!私を助けて!その瞬間、一人の男が夢の中に現れました。その男は真病神と名乗りました。真病神は彼女に告げます。貴女の望みを叶えてあげましょうと。彼女は喜び、そして願いました。私を救ってほしいと……すると彼女は別人のような優しい笑みを浮かべ言いました。私は幸せです、貴方のおかげですと。その瞬間、彼女の世界は変わりました。」
安宿「真病神はクレハの病を受け入れられるようにしたのですよね?彼女は精神病だった。それを真病神が取り憑いたと昔の人は表現した。そして女王クレハこそが、この日本国の最初の女王で将軍家や現在まで続く皇室は実は女王クレハが蘇った姿だという説もあります。では真病神はこの国にとってなんなのでしょうか?それとも貴方にとっては、真病神は何なのでしょうか?教えてください。真病神様。(ニヤリと笑う)さてとそろそろ寝ましょうか?お部屋まで案内いたしますよ。おやすみなさい、真病神様……」
真病神「ああ、おやすみ。(自室に戻る)真病神は俺だ……俺は真病神なんだ……!!ああっ……!頭が痛いっ!苦しいぃっ!!ああっ!!でも大丈夫だ。俺は真病神、負けるものかぁっ!!うぐぅっ……!!ううっ……!くっ……!ああっ……!!うぐっ……!」
それから、真病神と飛鳥、そして野神は三人で暮らし、野神は14歳になった。
野神は安宿の教育でこの日本に破滅という制裁を齎すために日々自身を鍛え、学び続けた。最初は抵抗のあった真病神もこの歪な暮らしに充実感を得ていたが、それからしばらくして真病神は自分自身の中で複雑な感情が入り混じって行くのを感じるようになった。しかし彼はその感情を認める事は出来なかった……。そんなある日の事である……。
安宿「真病神様、お食事をお持ち致しました。そして身も清めせて頂きます。」
真病神「……(無表情のまま黙っている)。ありがとう、安宿(微笑む)。お前だけが真病神である俺の事を理解してくれている……。」
安宿「はい、その通りです。私は真病神様を理解しています。…ですが、どうしたのですか?今日はやたらと素直ですね?」
真病神「いや、ただ……俺は真病神様である事を受け入れている。そしてそれが俺の使命だと……そう思っているのだが、時々分からなくなってくるんだ。俺は本当は何者なんだろうな?(寂しそうに笑う)……なんてくだらない事を考えただけだ!忘れてくれ……!さあ、風呂に入りたいんだ。用意してくれ……」
安宿「貴方は真病神です。この世界で唯一、真に病める神。それ以外には何もありません。…さあ、お風呂に入りましょう。(真病神を風呂に入れてからリビングに向かい本を読む野神に声をかける。)野神様、今夜のお食事はいかが致しましょう?」
野神「ああ、いつもと同じ様に頼むぞ。味噌汁と卵焼きとアジの干物に白米だ。あと漬け物があれば出しておいてくれると助かるかな。(そう言いチラッと横目で見る)ところで最近何をお考えなのですか、父上は?」
安宿「真病神様はご自分の存在意義について悩んでいらっしゃるのですよ。大丈夫です。私がいますから。では、行って参ります……。(部屋を出る)私はただ、真病神様にお使えできればそれで良いのです……。それが私の存在価値だから……。(独り言を呟く)」
野神はこの世界に制裁と破滅を齎すために日々鍛錬に勤しんでいたが…。
安宿との食事中、野神は訊ねる。
野神「なあ、安宿。…俺はいつになったらこの世界に破滅を齎す事が出来るんだ?そろそろだろ?」
安宿「いえ。まだその時ではありません。破滅を齎す時は、まだ先で御座います。お手元の書物をよくご覧くださいまし。ここにあるのは予言書ですよ?今はまだ、破滅の時ではありません。落ち着きなさいませ、野神様。それより早く食事を終わらせてくださいませ。(少しきつめの口調で)」
野神「分かった。すまなかったな、安宿……。そうだな!破滅の予言書と文字が書かれたこの書物はとても重要だよな!」
そして野神はそれからも来るべき破滅の日に備えて予言の書を何度も読み、その記された破滅が迫っている事実を確かめ続けた。それから何年後だろうか、予言の日が訪れた時……事件は起こることになる……。
野神「…安宿…!?父上…!?」
安宿は真病神の前に倒れていた。
真病神はその手にナイフを握っていた。彼は震える手で野神の心臓にその刃物を突き立てようとしていた……!彼のその姿を見た時、野神は自身の怒りが溢れ出すのを感じた!無意識に真病神の元に近づき攻撃しようとしたその時!
安宿「…の、がみ…野神様…良いのです…これで…良かったのです…(血まみれで震えながら野神の足首を掴む)」
野神「あ、安宿!」
安宿「私は…真病神様にお仕えし…真病神様こそが……真の王になられ、この国を統べる事が出来ると信じておりました……(吐血する)さぁ、これをお使い下さい。これが鍵です。これを真病神の権能で破壊してくださいまし……!そうすれば私は真の王に成った真病神様に仕えることができますわ……!」
野神「え……?」
安宿が差し出した鍵と呼ばれるものは黒く不気味な形相をしていた。
よくわからないままナイフを持って立ち尽くす真病神に差し出した。
野神「ち、父上…これを…(鍵を差し出す)」
真病神「俺は真病神だ……俺は真に病気を正すもの……。真の王になるのだ!それが俺の運命なんだっ!!うおおぉっー!!はああぁぁーっっーーっ!!」
だが、何も起こらない。
…何故なら真病神は、粕壁大和というただの人間なのだから。
大和は真病神ではない、人間だ。
それに安宿が渡した鍵も今まで巫女と言って殺して来た女の指のミイラだ。
真病神話等は大和がほざいた妄言なのだ……。真病神なんて物はこの世に存在しない……大和の世迷言でしかない……アレは大和が読んだ本の中の言葉で作った意味のない創作だ。
野神「ち、父上…?いかがなさったのですか…?」
真病神「(震えながらナイフを落とす)ぐっ……!?があぁぁ!……何故だ!?何故俺の邪魔をする……!なぜだぁぁっ!!うぅぅっー!ああっ……!うわああっーー!助けろぉぉおーー!頼むううぅっっー!俺は……俺はあぁっ……!!ぐぎゃぁあーーっ!!嫌だっ!」
野神「父上!?お、落ち着いてください!!ち、父上……!?俺は父上を何が有っても絶対にお守り致します!私は真病神の神子にして、大地の神、野神!!真に病める神の許に常に共にあり!(暴れる真病神を抑える)」
父上「あっ…ああ…安宿…安宿……飛鳥…飛鳥あぁぁっ…!!!!くそっ……!くそおおっーーっ!?待ってくれぇぇ……俺も行くぞ……必ず行くからなっ!必ずいくからっ……うわああぁっーああぁーぁっ!あああーっ!」
安宿、…大道寺飛鳥は血に塗れて死んだ。
そして野神は悟る。今こそ破滅の時なのだと。
真病神を信じなかった人類に破滅と言う名の制裁を与える時なのだと。
野神は安宿が用意してくれた日本刀や拳銃、ナイフなどを用意して玄関へ向かう。
生まれて初めてマンションの外へと出るのだ。
野神「父上、行って参ります。」
真病神「お、おお……野神……あの巨大な穢れを打ち消せるのはお前だけだ……!頼んだぞ……必ず殺せ……不死の巫女共を!皆殺しにしろぉぉっ!!いっひひひひぃー〜いひっひっっひっ!かははぁっ!」
野神「はい、行って参ります。」
そして野神は初めて、21歳でマンションの外へと出た。
初めて出た外は閑散としていた。急いでコンビニに向かいそこで貯金を全て下ろし武装した。それから大急ぎで駅に向かいネットや安宿に教えて貰った通りに切符を買い、電車やバスを駆使してようやく目的の地へ向かう……そして彼がとある大きな駅で降りた時だった……。
野神は銃を乱射し周囲の人間を無差別に殺傷、場合によっては巫女と思われる存在達を殺害する。辺り一面はまるで地獄のような光景だった。地が赤く染まり多くの血痕と悲鳴が巻き起こる。その現場となった場所もまた真っ赤に染まっていた。血まみれになって倒れている巫女らしき女達は皆、身体中を銃弾によって撃ち抜かれていた。
野神「我が名は野神ィィ!!!真の王に仕えし神にして、人類に破滅と言う名の制裁を下す者!我が怒りを思い知れェッッーーっ!はあっー!!喰らえぇぇーー!(野神は巫女と思われる少女を撃つ。)ぐはぁぁーっ!死ねええぇぇっっーっ!」
少女「きゃあああーーーーっ!?うああっー!?いたいですうぅぅっー!おねがい……っもう……もうやめっーぎゃあ゛あぁぁっーーっー!?!?……(物言わぬ屍となる)」
母「あ、あんたぁぁっ!やめてぇ……娘を殺さないで……殺さないでぇぇぇーーーっっー!!お願いだっからっあっぁー!?うぅうっ!!ひぎぃぃいーーっっ!どっひいいぃーっ!!ああっー!ああぁーっ!」
ホーム内で銃を乱射しまくった後日本刀で人々を斬りつけて駅を降り、そのまま真っ直ぐ近くの幹線道路まで向かう。野神は走りながら、街の人々を殺していく……!
さらに街中に手榴弾を投げて辺りを火の海にしながら叫び続ける……!やがて警察から逃れて辿り着いたのは誰も寄り付かない廃屋の教会だ。野神の目的はその奥にある部屋に鎮座する小さな像である。それはボタン型のコンピューターからゲーム機のような本体部へと続く円系のベルトのようなもので構成されており、壁際に棚が備え付けてあった。
野神「ここ…は…?」
その謎の装置に近づくと野神は電気が走ったかの様な鋭い激痛が走り倒れこんでしまう。そしてその装置を守る様に巫女と思われる少女達が現れる……!白いドレスを身にまとって眼に不死を表すバツマークがあった。人間ではないことは見た目にも明らかだ。
野神「うわああああああああーーーーーーーッッッッ!!!!!」
気がつくと野神は山奥のラブホテルに逃げ込んでおり、埃臭い中で一人佇んでいた。
野神「警察は…ここまでは来ないだろう…。俺が捕まったら父上まで捕まるかも知れない…。俺はここで暮らそう…そうすれば、敵に攻撃されないかも知れない……。もう一度この世界に破滅をもたらすのだ!」
このラブホテルには老人を中心としたホームレスが沢山居り、彼らを殴りつけ、拷問し、奴隷にして、よく働く者には金を与えて……。そんな生活を続けていたらやがて彼らは野神を神として崇めるようになったのだ……!!だが、それでも彼の心にはまだ、迷いがあった。それは破滅をもたらす事を躊躇う心の弱さが生み出した迷いであったのだ……!!野神はホテルの一室で苦悩するのだった……!。そしてついに25歳になった野神は決断し行動を開始する……!!
野神「(手の中にあるナイフを投げ放ち)狂ってしまえ……異世界の人間共……!!我々神の力を思い知るが良い!!この世から貴様等をお救い致しましょう!!はーははっはっ!アホめーぇっッ!!」
そして野神はホームレス数十名を引き連れて、再び都市へ向かい人々を殺害し始める。
武器は人を殺し集めた金で調達し、ホームレス達にも訓練を施した。
そして野神とホームレスは罪も無い人々を襲い続ける……!
駆けつけた警察と軍隊はその余りの強さに震え上がった……。一方的な殺戮に終わり都市は崩壊……、地獄と化した……!!それから数ヶ月後、野神はホームレス達に指示を与える!!それは異世界へと渡り神として君臨する事だった……!!!神を名乗り人々を導くのだ……!
野神「お前達に渡り神としての名を与える!お前はイクイドゥイ!意味は生ける者!(ホームレスに一人ずつ名前を与え始める)お前の名はプリゲッサ!意味は手紙!(ホームレスに名前を与える)お前はオドラクレト!意味は地図!(ホームレス達に新しい名前を次々と授けていく)」
イクイドゥイ「ありがたきお言葉でございますーっ!!我等に名前を与え給うなど、真の王たる貴方に出会えて我等は幸福でございますーッー!!ははーーっっ!!(感涙)……(野神を王として敬い始める)これから我々は貴方様をお守り致しまするーっ!」
プリゲッサ「うははっーっ!やっと神の信仰者として蘇れるとは……永き眠りから、まさか再び御身の役に立つ事が出来ようとは……!(感涙)我ら一同は心より王のお力に成りたいと考えておりますー!!命を賭けると致しましょうぞ……王よっっっーー!」
オドラレクト「ははっ!真の王としてその力、我々の為お使いください!我等に盾となる誉れをっーーっ!!必ずや貴方様のお心のままになりましょうっーーっっ!(感涙)……(野神に命と忠誠を捧げ始める)我等の命をどうか王の為にーッ!」
そして野神は一度、4年ぶりに真病神の元へ帰る事にした。
かつて一緒に暮らしていた家を訪ねると真病神はそこに居らず、家は廃墟になっていた。
野神「ち、父上…一体何処に…!?」
野上は混乱した。まさか、神の世界へ戻ったと言うのだろうか?
ならば自分はどうすれば良いと言うのだろう…。
……時間は四年前に遡る。
野神の手で安宿が押し入れの奥の奥に葬られた後、野神も旅立ち、真病神は一人になった。
マンションの中、誰も世話してくれる者も居らず、食事も寝具も無い殺風景な真病神の世界を前に真病神の心にも暗い不安が過ぎって行くのだった。
そしてそんな日々が続いたある日、冷蔵庫の中の食糧も尽き、薬も無くなり別室の押し入れからは腐敗臭が薄ら漂う中、自分の神殿が朽ちていくのを感じていた。
真病神「もう……我慢出来るかーッッ!!これはイカレちまっとるっっ!ほれぇいィっ〜!(クローゼットから一人ずつ人形を放り出し始める。)うはははーっはははっ……あんぐっうっ……ぐえっへぇっ……あひぇへぇーーっ!」
真病神は薬も切れ、食事も出来ず完全に狂ってしまっていた。
このままでは自分は死んでしまう、そう考えて小さな一軒家を半狂乱で出て行くと、そこには荒れた草木が広がる道が広がっておりそこを駆けていく。
しかし周囲に聳える石造の壁が、行く手を阻んでいた。真病神は戻れないかも知れない覚悟を決めて壁に近づこうとすると声が聞こえてきた。
それは人の声では無かったのだが不思議と理解できるもの悲しげな女性の声であった。彼女の声は何か良くないモノを倒さないと世界は終わると言った。
真病神「ああ…、知ってるとも。世界を終わらせるものはこの俺だろうよぉっ!(この世界の破滅を予言されて狂った真病神の笑い声が響いた瞬間だった……)
……ん?なんだあれは?壁か?この先に何かがあるのか?いや、しかし……これはもう壁だ……!ならば壊してやる!!」
真病神はその石壁を傍にあった鉄パイプで破壊すると奥には穴が空いており、その先には地下へと続く階段があった。そうして真病神は階段を降りていく。
最下層には神殿があって更にはその床の中央から道が伸びている様だった。きっとこれは新しい人類を生み出す為の何かしらだ。そしてこの先に……。
真病神「…………この奥だな。良いか俺の邪魔をする奴は生かしては置けぬ!!ハアッハッハッー!行くぞ我が王国へっ……!
真神の支配する世界はここから始まるのだァァアァアァーッッ!ひィィーーッャハアアアアァアーッ!?」
……真病神は必死に道を駆けていく。駆けて、駆けて、駆けて、駆けて、走った先にあったものは巨大な、高さ10メートルは超えるだろう時計の塔だった。
そしてそこは扉が1つしか存在しなかったのだ……!真病神はただそこに突入せざるを得なかった。それはまるで突風の如く塔を駆け上がる!
そして全てを目に収めようとするかの如く666段を一気にかけ上がるッッ!!……そして、頂上に辿り着いて見えた光景は。己にとって途方も無いものだった!!
遥かに見える下界では沢山の人間が寛ぐ街々が広がっていて!縦横無尽に広がる風景や障害物の数々が、どうしようもなく悲しい気持ちを駆り立てるのだった。
それはまるで住人達の国そのものの様で自分が完全なる部外者である事を痛感させられてしまう。
真病神「ああ、そうか。俺はいつも一人だった。人の輪の中に入れず、人に愛される事も、愛する事も無く、空想の世界に耽って、一人閉じこもっていた。
やっぱり俺の居場所は何処に行っても無いのかもしれない。一体俺が間違っていたのだろうか……?そもそも正義ってなんだ?正しい事とは??
誰にも言えない戯言かもしれない……だけれども俺は本当は救われる様な愛を求めていたのかもしれないな。そうだよなぁ、そうさ俺は報われたかっただけだ……。
時計塔の下の世界の人々を眺め続けた。そうしていればほんの少し気が楽になると思ったからだった。だが、一時の夢を見て満足して生きていける程、自分は強くは無かったのだ……。
そう思うと世界が壊れて無くなる事が祝福の様に思えたのだった!!
真病神「そうだ。この世界を、壊そう。それこそが、祝福だ。だって、この世界は俺を受け入れなかったじゃないか!俺を愛してくれなかったじゃないか!
だから、こんなもの……壊してやるんだ!!」
そして真病神は666階の時計塔から見える街の景色を全て崩壊させようと手を伸ばそうとして……息絶えたのだった。その姿は赤子と同じで、無力で儚いものだった……。
……実際の真病神は家から出る事も出来ないまま、自分の部屋で死んでいた。これは真病神の深層心理を色濃く表した夢でしか無かった…。
それから真病神と安宿、野神が暮らしていたこの家は役所の人間達が調査にやって来て、その異様な光景に驚嘆しつつ売りに出されて朽ちてしまったのだった…。
そんな事は知らず、四年経ち家の前で呆然と立ち尽くしていた野神だったが。

野神「……父上、いえ、真病神。俺は…俺は…貴方の代わりにこの国の王となります。女王クレハに代わり、俺こそがこの国の王になるんです。」
自身の住処であるラブホテルへと戻り、この国を支配するための準備を始めていた。その目は暗く冷たい……しかし、覚悟と希望に満ちた目だった……。
それから真病神は神の名を与えたホームレス達を引き連れてさらに山奥に来てそこで自給自足する村を作った。
ここで時折女を拉致し犯して子供を産ませ、さらには孤児や不良を集めて彼等を兵隊にした。
全ては人類を破滅と言う名の制裁を齎すため。野神自身がこの世の王になるため。そして……地獄と言う名の墓場を造り上げたのだった……。
最初こそ彼等は戸惑っていたがいつしか真病神を神として崇拝し、野神を王として敬い身を尽くすようになったのだ……。
野神「お前達、今日も息災か。」
村の少年兵「はっ、我々の忠義に曇りなしっ!全身全霊を持って王と共に国を作り上げていきたく思いまーすッッ!うひょほぉーーぃ!!(狂喜乱舞)あああっ……はあああァァッ!?アァ〜〜♥……ホオッおぉおォオオー〜ーッ!」
野神「うむ、それで良い。」
そして次第にこの村は拡大し、野神は日本で最も危険な思想犯に成り果ててしまったのだ……。
神の子と地獄の使者達の為に安全と安定を維持し続け、善良でかつ個性的な守護者達の想いと野心が影落とす悪と闇の帝国を作り上げて行く事となる。
一方その頃、48歳になった野神の母であった百合子は高校卒業後に事務員として働き、それからはある男性と結ばれ、二児の子供を作り幸せな家庭を築いていた。
心の片隅に息子である野神を想っていた時、TVでニュースを見た。
……野神だった。成長していたが、自分が最初に産んだ子供だと一目見て解った。
百合子は迷った。もう、野神達には関わるべきじゃない。自分には家族が居るのだから…、それでも百合子は心が揺れ動いていた……。
画面越しとはいえ息子が見ている真実がどんなものか知るべきではないだろうか……?
と。その結果、百合子は家族に相談してみる事にしたのだが。そうとなると気が重くて堪らなかった。
(16歳の時に子供を産んで、しかもその子が殺人を犯した大罪人だなんて知れたら……家族に何と説明したら良いのでしょう……?)
だが、勇気を出してまずは夫に相談した。すると夫は…
夫「百合子…、そう…か…。にわかには信じがたいし信じたくはないが…百合子はあの、野神の母親だったのか…。百合子は…どうしたいんだ?」
百合子「私は……、野神の母である前に貴方の妻であり花蓮と凌也の母……だけど、ごめんなさい。私、確かめたいの。どうしてあげる事が正解かを……知りたいわ。もちろん野神からきちんと話を聞いて納得した上で接する……つもりよ。」
夫「そうか、そうだよな。うん、百合子の信じるままにやってみれば良いと俺は思うよ。それで嫌になったら戻って来ても良いしね。」
百合子「貴方……!ごめんなさい、貴方に辛い思いをさせてしまうって解っていたのに私は自分の望みを優先させてしまう……。本当に駄目な妻ね……でも、必ず帰ってあの人や娘をこれから沢山幸せにしてあげてみせるからねっ!貴方!いつもありがとう!」
そして百合子は、まずは警察に行き野神の出自について、自分が32年前の高校一年生の頃に安宿と真病神と言う男にされた事等について語った。
警察「なるほど……調べた所、貴方が監禁されていたマンションに住んでいたのは大道寺飛鳥と言う青年。そして、貴方の言う真病神…と呼ばれていた、粕壁大和と言う青年ですが、彼は大道寺飛鳥の幼馴染です。彼等は一度、とある町に引っ越しをしており、粕壁大和と思われる人物は既に死亡しており、大道寺飛鳥も同じ家で死んでいます。」
百合子「そう、ですか……やっぱり事実は変えようがないのよね。真病神は常に自分の存在に迷い苦しんで、闇に埋もれたこの世界で何か得体の知れない神秘や真実、宇宙の真相の様なものでも見たのかもしれませんね。夢なのか幻なのか、まるで寓話の様にしか、私には思えないけれどね……」
そして百合子は警察の力を借りて、野神の住む村へと潜入する事にした。
野神が作った村は内向きにしか作っていないものが主流となっており、例え特権があっても子供を産むのが難しい25歳以下の女がここに来る事はルール違反というものだった。
7回訪問しても追い返された。そして九回目の後だった……百合子はここを支配する守護者、遂に野神の母だと名乗る事が出来たのだった。
そして、野神は自分の母だと名乗る百合子を前にしても特に思う事がなさそうだった。
だが、百合子はここに来たかったのだ。たとえどんな状況であっても……自分の息子の為なら何だってしようとする意志だけが存在していたのだから!
百合子「野神、ごめんなさい。私も貴方を引き取りたかった。でも、安宿は許してくれなかったわ。そのせいで、貴方は今…こんな事に…。」
野神「何を言ってる。これが俺の使命だ。真病神を信じず受け入れない人々に破滅と言う名の制裁を与えるために俺は生きている。
この腐った世界を変える為に俺は戦い続ける。それに俺は元々アンタを母とも思っていない。だから、俺に関わるな……」
百合子「野神……今は受け入れてくれなくても良いわ……きっといつか私は貴方に母だと認めさせてみせるから……!!貴方を心から愛しています。
だから、…私は貴方と戦うわ。貴方は間違った方向に行っている。人を殺し、破滅に導くだなんて……あってはならない事。私は貴方の母だから、貴方を止めます。」
野神「ならば俺は誰にも手を抜かない。親であろうが子孫であろうとも全て壊してみせる。母さん、いや、百合子、後悔しても知らないぞ……。」
すると百合子の周りを武装した老人が囲み始めると百合子はスマホを取り出し、スイッチを押す。
……百合子は正義を尊び、慈悲の心と共にある心優しき母、慈母だ。
スイッチを押すと村の周りに隠れていた自衛隊や警察、村に長年潜入していた先入観が一斉に村を襲撃し、大々的な暴動に至ったのであった!
……それでも野神は無表情のまま拳を構え、建物の中にてさえ押し寄せようとする警察達を一掃して行った……!!しかしその武闘さに暴徒たちが怯んだ時。
今まで口を開いていなかった屈強な老人達……野神の側近が立ち上がった!
イクイドゥイ「野神様!この、老いぼれのイクイは貴方様に全てを捧げました。この命も、魂も身体も何もかも貴方様に捧げる所存ですぞぉぉッ!!!うほオォおオオーーーッ!!!(狂喜)」
プリゲッサ「イクイドゥイの意見に賛同しましょう、このプリゲッサめはそうおっしゃると思っていましたから……私は戦う事が出来るようになりたい、いなくならないで下さいっ!お願いですから!私がこれからも必要とされる為の絶対条件だからああァああッ!!(哀)本当……本当ですからぁぁああ〜ッッッ!!!」
オドラレクト「我オドラレクトもまた、我が身を喰らいて糧にしてきた歴史ある故に野神よ、運命を切り開き生きようとそう、一度は闇の底に落ちてきた者は欲してしまったから求めるものよな〜……(しみじみ)さすれば儂がお主に協力しようではないかァァああ!!」
老人達は鬼神の如く野神と共に立ち上がり……暴徒となって迫りくる警察官、兵士を相手に激しい戦闘を繰り広げていく……!!
それは勇猛かつ、あまりに怒りと憎しみが強いが故に、激しく殺したり死なせたりして殺していった!
百合子は駆け付けた警官や潜入官によって保護され、間一髪で助かっていた……。そして現場からは怒声と怨念が強く伝わってくるようだった……。
そこには悲惨な犠牲を出した長い戦いが紡がれる中で野神は日本刀と銃を振るい警官や兵士を薙ぎ倒しながらもその目はどこか空虚で、何も感じていなかった。
そして百合子や自衛隊の兵士達に保護されながらパトカーで離れた所へと向かう。
百合子「(野神……。)」
一方その頃、野神はイクイドゥイ、プリゲッサ、オドラレクトを中心に村人達を鼓舞しながら警官、裏切者の潜入官、自衛隊達と交戦を繰り広げていた。
野神軍のその武の粋な猛撃に、警官、自衛隊、潜入官は劣勢を強いられた……!!
警官A「クソッ……、こんなに強いなんて聞いてねえぞ……!化け物めっ!何が英雄だ、ふざけやがって!オラアッ!!(拳銃を放つ)死ねぇえぇぇーーッ!!(パァンッッ!!!)アアー!?弾切れっ?クッソォオオーーーッッ!!」
自衛隊「ひ、怯むなっ!!弾の補給を急げ!!(弾丸を装填)……ッ?!な、何だ……あれは……!何なんだこの化物はァッ!?(戦慄)うおおおおォオオオーーッッ!!(突撃)くたばれぇぇえええ〜〜〜ッッッッ!!!!」
潜入官「イクイドゥイ、プリゲッサ、オドラレクトには気を付けろ!!あのジジイ共は村では渡り神と呼ばれていて、地獄の使者だ……!
決して動揺するなッ!いいな……ぐああああーーーっ(頭を撃ち抜かれる)く……そぉぉおおお…………!!(死亡する。)」
そして、野神軍は警察や自衛隊と戦い抜き、その結果村は壊滅…。
戦車まで一台持ってきた自衛隊によりなす術もなく敗北して行くのだった……。それでも野神軍の執念は凄まじかったが結局一矢報いる事も出来ずに、散り散りになっていくのであった……。こうしてようやく平和が戻ったのである……!
野神は逮捕され、刑務所へと連れて行かれる。
……だが、野神はこんな所では終わらないだろう。野神にはまだ彼に従う多くの者達がいるのだ。
必ずまた、立ち上がり反旗を翻す日が来るに違いない……!その時は今度こそ破滅の時が訪れるのか……?それとも、更なる崩壊を招くのか……?!それはまだ誰にも解らないのである……!!おしまい!!
そして野神が逮捕され、百合子は愛する夫と子供がいる家へと戻ってきたが…。
百合子「野神…私は、諦めないわ。貴方が人間に戻るまでずっと、いつまでも……。絶対に貴方の事を追い続けるからね……!!(泣)うぅっ、ううっ……!!(嗚咽家の中に入り、仏壇の前に座り手を合わせながら涙を流す。そしてふと写真立てを見るとそこには真病神と安宿の写真があった)真病神…私は一瞬でも貴方を愛した時があったわ…安宿…貴方は全ての黒幕だったけど、それでも貴方が私に見せていたあの姿は真実だったと信じたいわ。貴方達は私に何を求めていたのかしらね……?本当にただの子供を産む道具だったのかしら?私はいったい……どうすれば良かったの……?教えて下さぁぁいッ!!うぅっ……!」
そして、真病神こと粕壁大和は気づくと真っ白い空間にいた。
そこには一人の男が立っていた。
その男の姿は髪は銀髪に、顔は中性的で整っていた。服装は貴族の様なもの……そして、神々しさを感じさせた。彼は真病神にとって縁の深い人物であったのだ……。
男「やあ、お疲れさん。粕壁大和。」
粕壁大和「……アンタは、誰だ?」
真病神「あはは!君も知っての通り、真病神だよ!」
粕壁大和「ま、真病神!?本物の真病神…!?」
真病神「その通り!俺は君が創作した神、真病神で間違いないよ。……にしても君はよく頑張ったね。本当に素晴らしい!
野神を産んで、あそこまで成長させる事が出来た!
いやあ、感動したよ!!君の事ちょっと見直したよ〜!」
粕壁大和「……俺は、もう嫌だ。こんなはずじゃなかったんだ…。」
真病神「じゃあ、やり直せ。」

粕壁大和「そもそもお前がどうすれば良かったのか…。俺はお前から生まれて来たから俺が生まれる以前の時間には戻らないが、あのマンションで暮らしていた頃までには戻れる!…さあ、行ってこい!」
粕壁大和「えっ…ええええええ!!!!!」
真病神「そして、今度は…「真病神」としてではなく、粕壁大和として大道寺飛鳥に接するんだ…。」
そして大和はあの頃に戻る……。
粕壁大和「………。(マンションの一室で布団に包まり閉じこもっている。)」
大道寺飛鳥「真病神様、大丈夫ですか?何か食べたい物は御座いますか?そろそろ巫女がやってくる頃ですが。」
粕壁大和「いや、いい。放っておいてくれ……(布団から少しだけ顔を出して言う)。俺はもう疲れたんだ、このまま消える。さよならだ……飛鳥よ、今までありがとうな……じゃあな!(布団から飛び出して窓から飛び降りようとする)おいッ!?飛鳥!!何故止める?」
大道寺飛鳥「ま、真病神様!!お止め下さい!!貴方には生き続けて頂きたいのです!だから、どうか私の命で良ければ捧げますから……どうかお願いします!!(泣きながら土下座する)私を一人にしないで下さい……!お願いします……!ううっ……うぅっ!」
粕壁大和「ッ!?……飛鳥、何故そこまでして俺を助けようとするのだ?お前は一体何者なんだ……?(呆然としながら聞く)。お前は俺の味方なのか?……それとも敵か……?また、死ぬ運命を与えるのか?……どっちなんだッ!?言ってみろッ!はっきりしろっ!!…どうしてお前は、高校の頃虐められてた俺の友達になってくれたんだ!?お前だけは俺を庇ってくれたんだ!?」
大道寺飛鳥「……!!!……真病神様、いや…大和…。俺はあの頃、片親でさ、母親に殴られて暮らして来たんだよ…。学校もつまらない薄っぺらい奴らばかりで…人生にも青春にも絶望していたその時にお前から聞いた真病神の神話はどれも退廃的で…どこか惹かれていたんだ。そして、真病神に変身する大和を見て俺は感動して……お前と友達になりたかったんだ!!だから俺は、お前の味方だよ……!俺を救ってくれた事への恩返しとして……お前を死なせたりしない……!例えお前がそれを望んでなくても、俺がお前を守り抜く!そして、お前を完全な真病神にする!お前は真病神だ!この世界に破滅と言う制裁を齎す日本国の真の王なんだ!!」
粕壁大和「そ、そうか……。飛鳥が俺を守ってくれるなら、俺は安心して暮らせる……!ありがとうな……でも、俺は真病神じゃない。真病神は、作り話だ。
世界の全てを憎んだ俺が作った、現実逃避の神話なんだ…。」
大道寺飛鳥「いや、違うぞ!お前は真病神だ……!お前がその神話を真実にするんだ……!お前なら出来る!お前こそ真病神なんだ……。(飛鳥は涙を拭いてニコッと笑い手を握る)俺は信じている、だから一緒に頑張ろうぜ……!俺も力になるからさ!」
粕壁大和「…飛鳥、目を覚せ……!俺は真病神じゃない、人間だ……。真病神は幻想なんだ……!現実の社会は甘くない、力がなければ生き残れないんだ……!それでも俺は飛鳥が望むならそばにいるよ。この世界を人間として戦うよ。…飛鳥、俺と今度こそ、本当の親友になろう。真病神と安宿と言う崇拝の関係ではなく、粕壁大和と大道寺飛鳥と言う親友になろう……!もう、俺を独りにしないでくれ……頼むよ、飛鳥……。(泣き崩れる)もう俺には誰もいないんだ!!誰も信じられなくなってしまっているんだ!!それでも、俺はお前の味方だッ!」
大道寺飛鳥「真病神、いや大和……!俺もお前と親友になりたい!そして、共に戦おう!!(大和の手を握る)……俺達は仲間だ!!俺達ならきっと上手く行くさ!だから頑張ろうぜ……。(飛鳥はニコッと笑う)そうだな!俺たちはもう仲間だよなっ!!」
粕壁大和「ああ、そうだ!俺達はもう仲間だ……!(二人は抱き合い、涙を流しながら笑い合う)……俺は今まで誰にも理解されなかった。友達もいなかったし、ずっと独りだった。だがこれからは違うんだッ!飛鳥という最高の相棒がいるッ!飛鳥がいれば俺はどんな事だって出来る気がするよ……!」
そして、大和はマンションに引き篭もっていた生活を辞めて、警察に自首してしっかりと刑を償ってから就職した。
大和の罪は暴行罪、傷害罪、監禁幇助罪だったが精神的な病気と飛鳥の教唆、洗脳による所が大きかったので病院での治療を終え、実質無罪に終わった。
そして飛鳥は巫女として大和に捧げた女達を殺した罪を償うために自首をして警察で裁かれることになった……。飛鳥は罪を認めたので刑は軽くなった。懲役7年と社会奉仕活動1年という事になったのである。そして、大和は更生して真面目に働き、普通の社会人として生きていく事になったのだった……。
それから7年後、大和は立派な社会人として働いていた。彼は人間として生きていくと決めたのだ。
そして、今日は飛鳥の釈放の日。
飛鳥を刑務所から迎えに来た。
粕壁大和「……飛鳥!!」
大道寺飛鳥「……!……大和ぉ!!俺、釈放になったんだ!(涙ぐみながら抱きつく)俺を迎えに来てくれたのか……!?本当にありがとう!お前とまた会えて嬉しいよ!!」
粕壁大和「俺も嬉しいよ……。飛鳥、これからは俺が君を支えるから、安心してくれ。二人で頑張ろうぜ……!(涙ぐみながら飛鳥を抱き締める)俺もお前と会えて幸せだよ……っ!(涙を流す)ずっと会いたかったんだ……!もう離さないからなッ!(強く抱き寄せる)絶対になッ!!」
それから釈放された飛鳥は大和と共に生活を始めた。
飛鳥の就職先は、元々の前職を活かしてスーパーの正社員として採用された。二人は同棲する事になり、そして、結婚もした。
同性という事もあり結婚式は内輪だけで行われたがとても和やかな雰囲気で執り行われた。これから二人は幸せな人生を送る事になるのだろう……。物語はここで終わる……。
真病神を巡る大和と飛鳥の因縁の物語はこれで幕を閉じるのである……!
6 12/17(Sun) 13:06:15M (jpg/372KB)
ギムレット「ん……ここは…。」
気が付くとそこは四方が灰色の壁と床に囲まれた牢屋でギムレットを含む三人の男が全裸で閉じ込められていた。
ソル「気が付いたか。俺はソル。こっちはベイユだ。…俺も気が付いたらここに閉じ込められてたんだ…。」
ベイユ「私はベイユです。私も気が付いたらここに……」
ソル「まずは自己紹介しないか?俺はソル。普段は新聞記者をしているよ。」
ベイユ「私はベイユと申します。普段はカフェのウェイターをしております。」
ギムレット「僕は…ギムレット。…僕の職業は…。……僕は……何者なんだろう……?」
ソル「記憶が無いのか!?」
ギムレット「いや、名前は覚えているよ。ただ、自分が何者かが思い出せないんだ」
ベイユ「ややこしい事になりましたね…。うん?」
すると、天井からどさっとパンと袋詰されたほかほかのシチューが一人分落ちて来る。
ソル「これは…シチューとパンだ!でも…一人分だな?三等分するか…?」
ベイユ「いや、このパンは私一人で頂きたい。」
ソル「はあ!?」
ギムレット「シチューはいらないの?」
ベイユ「ええ。私はパンとシチューだけで充分です」
ソル「いやいやいやいや!!!だからこれは一人分しか無いんだよ!なんでお前、独り占めしようとしてるんだよ!?」
ベイユ「しかしこれを三等分しても腹は膨れません。余計に腹が減るだけでしょう。でしたら戦って奪い合いしますか?私は構いませんが。」
ソル「それも嫌だよ!でも、これしかないんだからしょうがないだろ!!」
ギムレット「早くしないと冷めちゃうよ…?」
ベイユ「ならこうしましょう。一人が食べる、残りの二人は争わない。これでどうでしょう?」
ソル「くっ……。しょうがないな……」
ギムレット「じゃあ、どうやって食べる人間を決める?」
ベイユ「普通に、じゃんけんで良いのでは?」
ソル「よし!じゃんけん!パー!」
ベイユ「チョキ」
ギムレット「ぐー」
ソル「あいこでしょ!チョキ!」
ベイユ「パー」
ギムレット「ぐー」
ソル「決まらねえな!じゃあまず、ベイユ!俺と勝負だ!じゃんけん!!グー!」
ベイユ「チョキ」
ソル「よっしゃあ!俺の勝ちッ!次はギムレット!じゃんけん!パー!」
ギムレット「グー」
ソル「よっしゃあ!俺の勝ちィ!!(シチューとパンを奪い取る様にして食べる!)美味ぇ〜〜!!!!」
ベイユ「お見事……」
ギムレット「(羨ましそうに見ている。)」
ソル「ふー!腹いっぱいだぜ!……ん?」
次はばさっと男性用の下着上下が落ちて来たが、それも一人分だ。
ソル「今度は下着だ!これも一人分かよ…。どうする?これもじゃんけんで決めるか?」
ベイユ「私は結構ですよ。どうぞお二人で決めてください。」
ソル「ええ…。お前裸でいいのかよ。」
ベイユ「そう言う訳ではありませんが、それなりに暖房も効いてますし、とくには。」
7 12/17(Sun) 13:07:12M
ソル「うーん、ギムレット。どうする?じゃんけんで決めるか?」
ギムレット「うん、ここは公平にジャンケンで決めようよ!」
ソル「よーし!じゃんけん…(こいつ、さっきからグーばっか出すからな…)パー!!」
ギムレット「(パーを出す)」
ソル「(えっ、まじか。)あいこでしょ!チョキ!!」
ギムレット「(チョキを出す)」
ソル「チョキ!」
ギムレット「パー」
ソル「よっしゃあ!!俺の勝ちィ!(早速下着を着る)あったけェ〜〜〜!!!!!!やっぱり全然違うぜ!!最高だ!!有難うな俺ばっかり!!」
ベイユ「ええ。良かったですね。」
ギムレット「(羨ましそうに見ている。)」
すると、今度は作業着の様な灰色のツナギが一着落ちて来た。
ソル「あー、ツナギか…。うーん、下着無しで着るのも衛生的にどうかと思うし、このツナギは俺が貰ってもいいか?お前等の分も落ちて来るかも知れねえし。」
ベイユ「どうぞ。私は構いません」
ギムレット「(羨ましそうに見ている。)」
ソル「…ギムレットは、服着たいのか?」
ギムレット「えっ、うん。できれば服着たいな……」
ソル「解った。じゃあそのツナギはお前にやる。でも、下着無しだからこすれたり被れたりしても俺は知らないぞ。」
ギムレット「うん!有難う!(ツナギを着る)」
そうしている内に三人分の水が落ちて来た。
ソル「お、水は三人分なのか。(水を拾う。)ぷはーっ!生き返るぜ!」
ベイユ「貴方は食事で水分を採っているでしょうが私達はこれが初めての水分です。(ぐびぐび飲みながら)」
ソル「そりゃそうだ」
そして三人で過ごして今が昼か夜か、何時間経ったのかも解らないまましばらくが過ぎた。
すると天井からまた何かが落ちて来た。次は赤いドレスが落ちて来た。これも一人分だ。
三人でじゃんけんした結果、ベイユが着る事になり、そして次に下着が落ちて来た。これはギムレットに渡した。
ソル「これはツナギを着てるギムレットが着た方が良いしな。ほらよ。」
ギムレット「うん、有難う…(下着を履いてツナギを着直す。)」
こうして、現在ソルは下着姿。ベイユは赤いドレス。ギムレットは下着にツナギと言う恰好だ。
ソル「にしてもベイユ。その格好で良いのかよ。お前男じゃん。」
ベイユ「構いませんよ。どうせ誰も見ていませんし、私の男性性なんてもう捨てましたから」
ソル「……?…まあ、いいや。それにしてもここは何なんだ?俺達は出られるのかよ。」
ギムレット「……もう出れないのかな?怖いよ……(泣き出す)」
ソル「ああもう、泣くなって。大丈夫だって飯は出て来るし…。」
そんな事を言っていると、また食事が出て来た。
今度は袋詰めされた野菜スープだ。しかし一人分しか無い。
ソル「うーん、どうする?このスープは……?正直俺は最初のシチューとパンを貰ったし、お前等に譲るよ。(正直全然足りねえけど…。)」
ベイユ「いや、私も結構ですよ。ギムレットにあげて下さい」
ソル「……ん…そうか…。おい、ギムレット。これ食って元気出せ。(野菜スープを差し出す。)」
ギムレット「(泣き止み)うん。有難う…。」
そうしている内に、再び天井から何か落ちて来た。
それは何と、ギムレットの背丈に合わせた子供服一式と靴。そどうやらギムレットに着て欲しい様だ。
8 12/17(Sun) 13:07:53M
ソル「………ギムレット、これ着るか?」
ギムレットはこの中でベイユの次に長身でやや筋肉質だ。年齢的に見れば20歳くらいか。
正直、どうなのだろうと思ったが…。ギムレットは。
ギムレット「え、良いの!?ありがとう!(子供服一式と靴を身に着ける)」
ソル「……ツナギは俺が着るな。(ギムレットが着ていたツナギを着る。)」
ベイユ「……ねえ、ソル。」
ソル「ああ…。何かアイツ、凄い子供っぽいよな…。」
ベイユ「ええ、正直私は違和感しかないです」
ソル「……うん…。」
そんな話をしている内に、また天井から何か落ちて来た。
今度はソファがドンッと落ちて来る。
そのソファを三人で運んで飾っているとまた何か落ちて来た。
今度は何だろうか?ぬいぐるみや絵本が落ちて来る。これも一人分だ。これはギムレットの物となる様だ。
ギムレットはそれを手に取り、嬉しそうな顔で抱きしめている。
ベイユ「ねえ、ギムレット。」
ギムレット「何?ベイユ。」
ベイユ「貴方は幾つか、覚えていますか?それも解らない?」
ギムレット「うん……。全然解んない……」
ベイユ「そうですか…。何と言うか、もう少し様子を見た方が良いかも知れませんが、ソル。貴方はどうして私達が閉じ込められているか解りますか?」
ソル「え?…うーん…。見当も付かないな……」
そんな話をしているとまた何か落ちて来る。
今度は食べ物で、今度はクッキーが落ちて来た。これも一人分だ。
ソル「なあ、ベイユ。そろそろお前が食べなよ。腹減ってんだろ?」
ベイユ「いえ、私は。ソルが食べなさい。」
ソル「………解った。けど、次食べ物が落ちて来たらそれはお前が食え。何であっても。」
ベイユ「良いでしょう」
ソル「ギムレット、ほら、クッキーが五枚あるからさ、お前が三枚食べろ。(三枚のクッキーを渡す。)」
ギムレット「うん!有難う、ソル!」
そして、次に落ちて来たのは……ベチャッ!!
「食べ物です。」と書かれたその袋の中に入っていたのは…糞だった。
ソル「うわあ!!おい!ベイユ!!」
ベイユ「……私にそれを食えと?(嫌そうな顔)」
ソル「いや、そうは言ってないけど……流石に糞は食えないだろ…。でも、これどうやって処理する?」
ギムレット「僕が食べるよ」
ソル「は!?お前、流石にそれはちょっと……。腹壊すぞ!?」
ギムレット「(ソルの持つ袋入りの糞を手に取ろうとし)」
ソル「おい!ちょっと待て!何でお前、そんなに近づくんだよ!?やめっ……ああもう!!(糞をひったくる様にして奪う。)スープとかシチューの袋あるだろ!?それに何十にもして入れるぞ!!」
ベイユ「そもそも……排泄物の処理はどうします?ここにトイレはありませんから……だから私は、食事をしたくなかったんです。」
ソル「そ、それを先に言えよ!!」
そんな風に騒いでいるとまた天井から何かが落ちる。
それは……トイレットペーパーのロールだった。それは三人分あった。それとティッシュペーパーのパックだ。これで用を足せと言う事だろう。
ソル「いやいや便所が無い限りどうにもならないだろ。それに捨てるのはどうすりゃいいんだよ…。」
ギムレット「ここに穴があるよ?(部屋の隅に蓋つきの穴がある。)」
9 12/17(Sun) 13:08:20M
ソル「ええ……。そんな所におしっこできるのか……?俺、この年で野ションはちょっとな……まあ、我儘は言えないか。」
ベイユ「……私は少し席を外します。(そう言いつつ部屋の隅へ移動する。)」
ソル「………。」
そうしている内にまた天井から何かが落ちて来た。
次はシーツと毛布と枕だ。そして食事もパンと水が落ちて来た。これは三人分だ。それから紙コップ、ティッシュペーパー、タオルなどもある様だが……。
ソル「シーツと毛布と枕は一人分だな。俺はもう、この際協力だと思ってるからお前らに譲るよ。シーツと毛布と枕、ベイユ…お前使うか?(ベイユに歩み寄る)」
ベイユ「ええ、有難うございます。(ギムレットが持ってたシーツと毛布を受け取る)」
ソル「(少しは機嫌が直ったな…。)ギムレット、悪いがお前はソファだけで寝てくれ。俺は地面で寝る。」
ギムレット「うん。解ったよ」
ソル「(ギムレットに歩み寄り)ベイユの奴って良く解らないよな。拘りが強そうだし、女のドレスは着るし、何考えてるか解らねえよ。」
ギムレット「確かにね……。でも、優しい所もあるよ?(笑いながら)」
ソル「それはそうだけどよ…。ところでギムレット、何か思い出して来たか?」
ギムレット「ううん。何も」
ソル「そうか…。大丈夫か?俺のパン、少しいるか?(一口ほどパンをちぎって渡す)」
ギムレット「有難う。でも、大丈夫」
ソル「そうか。(自分のパンを食べる。)……早く、出たいな…。俺には恋人がいるんだ。今朝、喧嘩して職場へ行っちまったから…早く仲直りしたいよ。」
ギムレット「恋人、いるんだ。どんな人なの?」
ソル「名前はメリッサで、料理が得意で綺麗で可愛くて性格も良い奴さ。優しくてさ……ちょっと怒りっぽい所もあるけどそこも可愛いっていうかな。俺なんかには勿体ないくらいの子なんだ。」
ギムレット「ふふ、そっか…。」
そうして三人は灰色の部屋の中で眠りに就いた。
その翌日…目が覚めるとまた天井から何かが落ちて来た。次は食器だ。それぞれ違う皿やナイフ・スプーン・フォークとコップだ。これで食事をしろと言う事だろう。
他には……朝食として、パンとスープ、サラダとベーコンエッグがある。それと水がまた天井から落ちて来た。
ソル「おおおお!!すげえ!ご馳走じゃんか!ベイユ!お前食えよ!俺のベーコンエッグをやるよ。お前、腹減ってるだろ!?」
ベイユ「え、良いんですか?では遠慮なく。(ソルのベーコンエッグを食べる)美味しいですね」
ソル「へへ、美味いなあ。ギムレットも俺のスープを分けてやろうか?」
ギムレット「ううん。大丈夫。有難う、ソル」
ソル「そうか。良く食べろよ。」
そうして三人が食事をしているとまた何かが落ちて来た。
それはベッドのマットレスだ!しかし一人分であり……。
ソル「…このマットレスはベイユ、お前が持ってるシーツや枕、毛布に使え。」
ベイユ「いいえ、私は別に大丈夫ですから……。(遠慮する)」
ソル「そうか。じゃあ…ギムレット。今夜からこのマットレスで寝な。」
ギムレット「え、良いの?有難う」
ソル「おう。…さてと、じゃあ今ある物をまとめよう。ここはトイレ兼ゴミ箱がある部屋。
俺はツナギを着ている。所持品は特に無し。ベイユは赤いドレス。下着は無い。枕とシーツと毛布を持ってる。
10 12/17(Sun) 13:09:07M
ベイユは子供服と靴。そしてオモチャと絵本とマットレスがある。…で、共有家具はソファと各食器。…大丈夫か?」
ベイユ「ええ、解りました」
ギムレット「うん。」
ソル「俺達はもう少しこの部屋を探索した方が良いと思う。今回穴が見付かった様に他にも何かあるかも知れねえ。」
ベイユ「そうですね。(そう言いつつ周囲を探索する。)」
ギムレット「(真似をする様に探索する)……あれ?(何かボタンの様な物を押す)…あ、(天井から何か落ちて来る)」
次に落ちて来たのはライトとティッシュペーパーだった。今度は三人分ある。それから水が天井から落ちて来た。
ソル「ライト…?これから必要になるのか?…ティッシュはもういらないな。あとは二人分の寝具が欲しいな。出来ればマットレスも。」
そう言うと再び天井から何かが落ちて来た。
今度は枕と毛布だ。それから、水が落ちて来た。これは三人分ある様だ。
ソル「おお、枕と毛布が落ちて来た。三人分だから一枚余るな。ギムレット、この毛布を敷布団に使え。あと、枕ももう一つ要るか?抱き枕かクッションにでもしろよ。」
ギムレット「うん。有難う(ソルから毛布を受け取り、敷布団代わりに使う)」
ソル「ある程度は要望聞いてくれるって事は…俺らの動向を伺ってはいるんだな…。じゃあ…もっと肉が食いてえ!!」
ソルがそう言うと再び天井から何かが落ちてきた。
今度は椅子と机と一人分の食事だ。食事の内容は袋詰めされたパンとスープ。そしてサラダだ。
ソル「うーーーん、なるほどな?完全に要望を聞くのは難しい訳だ。…おい、誰か食事食べるか?」
ベイユ「遠慮します。(首を横に振る)」
ギムレット「うーん……いらないかなあ。(首を傾げる)」
ソル「本当にいいのか?じゃあ俺が食べるぞ。(むしゃむしゃ)美味い…!!飯が少ないのは困りものだけど、何か慣れて来たな。」
ベイユ「私は本とか、暇を潰せるものが欲しいですね。」
ベイユがそう呟くと、天井に穴が開き、そこから一冊の本が落ちて来た。それをベイユは拾い上げる。表紙には『幸せを呼ぶ魔法』と書かれている。どうやら恋愛ものの小説らしい。
ベイユ「……恋愛小説ですか。少し興味があります。(そう言いつつ本を読み始める)」
ソル「ベイユ、机と椅子使うか?(ベイユがいる隅に机と椅子を運ぶ。)この隅はお前の部屋にしていいぜ。」
ベイユ「私はここで良いですよ。(本を読みつつ)」
ソル「お前本当に可愛げないなあ。…じゃあこの机と椅子は俺が使おうかな。…おい!天井!ノートとかペンをくれ!記録を残したい!」
そう言えば天井からペンとノートが落ちてくる。
今度は一人分の食事だ。食事の内容はパンとスープにサラダ。そして、水が落ちてきた。
ソル「おお。また落ちて来た。…この食事はベイユとギムレット二人で分けて食えよ。」
ベイユ「…有難うございます。(礼を言う)」
ギムレット「有難う。(ソルに礼を言い、食事を受け取る)」
ソル「……さて、俺は探索をしようかな……。(辺りを見回す。)おん?…これは…(またスイッチを見付けそこを押すと、ゴゴゴ…と隠し扉が開く)うおッ!?なんだぁ!??」
ソルがライトを持ってその扉の先を進んでいくと、そこは風呂場と洗面所。そしてトイレがあった。どうやらこの部屋は脱衣所も兼ねている様だ。
11 12/17(Sun) 13:09:48M
ソル「おおッ!おいっ!ベイユ!まともな風呂場と洗面所とトイレがあったぞ!これでお前も人目を気にせずクソ出来るぞ!!」
ベイユ「下品な人ですね…。まあ、そうですね。(頷く)」
ソル「これはもしかすると…少なくとも死ぬ事は無さそうな気がしてきたが、この様子だと他にも隠し部屋がありそうだな?」
ベイユ「そうですね、…ですが、妙ではありませんか?」
ソル「妙って?」
ベイユ「恐らくこの部屋の主は私達を殺す気は無さそうだ。だが、それなら何故風呂場だトイレ等を隠し部屋にしたり家具や食事を小出しにする?」
ソル「うーん。そう言われると確かに妙だな?……何だかまるで……。」
ベイユ「私達がどんな行動を起こすか、観察しているみたいですよね?」
ソル「監視されてんのかなあ。でも、それなら余計にこの隠し部屋要素が気になるよな」
ベイユ「まあ、私は外の世界に然程興味もありませんし死なないで済むならここに居ても構いません。」
ソル「俺はそう言う訳にはいかないんだよ。」
ベイユ「そうですか。まあ、ここでの生活が便利になるなら協力はしますよ。死にたくはありませんし。」
ソル「ほんっと可愛げがないなあ。…まあ、いいや俺は隠し部屋を探すよ。」
そうしてソルはベイユが本を読み、ギムレットが玩具で遊んでいる間隠し部屋を探すために四方の部屋や水回りの部屋の隠しスイッチを探し続けた。
すると、天井からまた何かが落ちてきた。今度は紙と鉛筆だ。それをソルは受け取る。
ソル「なーんかズレてるんだよなあ。この天井。まあいいや。…ギムレット!紙と鉛筆がある。お絵描きするか?」
ギムレット「いや、いいよ。(ソルに断る)」
ソル「じゃあこれはメモ帳にでもするかあ。」
そして隠しスイッチを探し続けていたら、四方の部屋の床の隅に見付けた。
それを押すと、今度は隠し階段が出て来た。ライトを持ってそこを降りるとその先には地下牢があった。
その奥には机があり、机の上にはナイフと日記帳が置いてあった。ソルはその日記帳を読む事にする。そこには何かヒントがあるかも知れないからだ。
多分12月3日:ここは何だ?何で俺がこんな所に?まあ、どうでも良い。それより飯だ。今日もパンとスープしかねえ……。けど、質素だが飢え死にするよりはマシか……。
12月4日:アイツ、やっぱり持ってねえ。このままじゃ飢え死にする。しかし、アイツは部屋にいると妙な事が起こるっつってたな……。
12月5日:また飯だ。何か変な部屋が出て来たな……。まあ、飢え死にしないならどうでも良い。
12月10日:アイツ……今日も飯を持って来なかったな……。
12月12日:何だこの部屋……。変な声が聞こえる……?
12月14日:やべえ、アイツにばれた。でも俺が何も持ってねえって解るのと捕まるのとどっちが先だろうな?
12月28日:何で誰も助けにこねえんだよ!!
12月30日:腹が減った。
12月31日:昨日から何も食ってねえ。死ぬのか……俺……。アイツはどうしたんだろう……。
12月38日:ああ、ああああ、あああああ、あああああ、……しにたくない、しにたくない、死にたくない……。
13月1日:ああ、ああ、ああ、あああ……………………。
13月4日:何か聞こえた気がしたが気のせいか?
13月283日:ごめんな、さい、ごめん、なさい……。
12 12/17(Sun) 13:10:39M
13月31日:ごめんなさ、い、ごめ、んなさ……。
14月14日:……もうなにもおもいだせない。おれはだれだったんだろう?
14月1109日:ボクハダレダロウ?ボクハイッタイダレナンダロウ?
14月16日:タス、ケテ……。
14月18日:デモ、タスケニハコナイデ
……日記はここで終わっている。
ソルはその内容に冷や汗を掻き、これはベイユとギムレットには見せてはいけないと悟る。
ソル「俺が…早くここを脱出する方法を見つけねえと…大変な事になるぞ…。」
そしてさらにその地下牢と調べるが特に何も無かったのでナイフと日記帳を回収し周囲を調べる。
ソル「…ここは、物置き場にでもするか…。」
日記帳はこのままここに隠しておこう。
そしてベイユとギムレットがいる部屋へと戻ってくるとギムレットは玩具で遊んでいたが、ベイユの姿がなかった。
ソル「ベイユは?」
ギムレット「お風呂に行ったよ。」
ソル「そうか。……ベイユもまともな服をもう少し着させてやりたい。…なあ、天井。ベイユにもっとまともな服をくれよ。」
ソルが上を見上げてそう言うと天井から何かが落ちてきた。それは服だった。
服のデザインは花柄のワンピースとサンダル。それから下着だ。下着はきちんと女性用だった。とりあえずソルは顔を顰めてそれを持ってベイユが風呂から戻るのを待つ事にした。
ソル「ベイユ、湯加減はどうだった?」
ベイユ「(濡れた髪をタオルで拭きながら)丁度いい湯加減でしたよ」
ソル「ほら、これ天井に貰って来たんだけど……着るか?(ワンピースとサンダルと女性用下着を渡す)」
ベイユ「ええ、(受け取る)有難うございます」
ソル「お前さあ、女物の服…いいのか?お前は男だろ?男性性を捨てたとか言ってたけど…。馬鹿にしてるよなあ。あの天井。」
ベイユ「私は気にしてません」
ソル「そうか…。(違和感すごいんだよなあ。ベイユはイケメンではあるけどどう見ても男だし…。)」
ベイユ「それより地下には何かありましたか?」
ソル「あ、ああ…。地下牢でナイフがあったよ。でもそれ以外は何も。」
ベイユ「へえ…何だか物騒ですね。私も後で行っていいですか?」
ソル「え!?いや、でも危険かも知れないしな。」
ベイユ「充分調べたのでしょう?だったら私、その地下牢で暮らしたいです。食事は必要になったら取りに行きますから。」
ソル「やめとけって。…せめて、もう少し調べてからにしてくれ。」
ベイユ「はい……。」
ソル「ベイユは俺等と一緒に過ごすのが嫌なのか?」
ベイユ「いいえ。ただ、地下には何がありますか気になって」
ソル「そうか…。」
結局ソルはこっそり日記帳を回収して空になった地下牢にベイユを招いた。
ベイユは地下へと降りていくと、そこには牢屋があった。
牢屋の中には何もなかったがベイユは薄暗いそこが気に入り、ライトと本を持ってそこで暮らし始めた。
そして基本的に最初の部屋にはギムレットとソルの二人っきりになった。
ソル「…あー…いろんな所探し尽くしたなあ…。……ベイユに本でも持っていくか。…なあ、天井。ベイユのために本を用意してくれ。何冊か。」
13 12/17(Sun) 13:11:19M
ソルが天井を見上げてそう言うと天井から本が落ちてきた。ソルはそれを拾う。本は色んなジャンルの物があった。まずは娯楽小説。これはベイユは喜びそうだなあと思った。
そして、次に図鑑や辞典、専門書や写真集の本。他にもミステリー小説等もある。ソルがこれらの本を持っていくとベイユは喜んだ。
ベイユ「ここで本でも読んでずっと暮らすのも良いかも知れませんね。」
ソル「お前なあ…。本当に脱出する気は無いのか?脱出しないと大変な事になるかも知れないぞ?」
ベイユ「私は構いませんよ。……ソルもここにずっといてもいいんですよ?」
ソル「俺は嫌だよ。俺には外に出たい理由があるし。」
ベイユ「……そうですか。」
ソル「じゃあ、俺は探索に戻るよ。まあなんだ。お前に嫌われてる訳じゃなかった事が解っただけ良かった。」
ベイユ「私がソルを嫌う?そんな事ある訳ないじゃないですか」
その言葉を聞いて笑うとソルは再び探索に戻る。
それからしばらく時間が経ち、ソルは探索やギムレットとベイユの世話をして日々の事を記録。
ベイユは地下牢で本を読み、たまに上で風呂に入ったり着替え、食事をして再び地下牢へ戻り、ギムレットは玩具や絵本で遊びながら絵を描いたり等をして過ごしている。
3ヶ月くらい経ったある日の事、ソルが探索から戻るとベイユが地下牢で衰弱していた。それを見たソルは青ざめて慌てて駆け寄る。
ソル「ベイユ!」
ベイユ「ソル……。私、もう駄目です」
ソル「馬鹿言うな!(一度地下牢を出て部屋へ戻ると)天井!ベイユの様子が可笑しい!薬をくれ!!」
そう叫ぶと天井から薬瓶が落ちてきた。ソルはそれを持って地下牢へ戻るとベイユに飲ませる。すると暫くしてベイユは落ち着いたようで、呼吸も普通に戻っていた。
ソル「良かった…。だけど、やっぱりこの部屋でずっと暮らしているのは駄目だ。俺達皆で外へ脱出しよう。」
ベイユ「……でも、薬で楽になりました。ここの庇護の元生きている事がダメな事だとは思いません。」
ソル「今回はそれで治ったから良かった!だが、医者が必要になったら?手術が必要だったら!?どうするんだ。その時は諦めて死ぬって言うのか?」
ベイユ「私はそんなヤワな男じゃありません」
ソル「引きこもって体調崩した男が何言ってんだ!?じゃあもう助けないからな!?勝手にしろ!!」
ベイユ「助けなくてもいいですよ。どうせ私はもう長くはありませんし」
ソル「……は!?」
ベイユ「元々、余命数年の寿命なんです、私。」
ソル「……ベイユ…。」
ベイユ「だから、放っておいてください。」
ソル「………じゃあ、勝手にしろ」
そしてソルはそれ以来ベイユと口を聞かなくなった。
そんなある日、ソルはまた壁に小さな隠しスイッチを見付け、そこを押すと長く果ての無い廊下を見付けた。
一度引き返すとギムレットへと歩み寄り。
ソル「ギムレット!…この廊下、随分長い。俺は食糧を纏めて野宿覚悟でこの部屋を出ようと思う。お前はどうする?」
ギムレット「僕はソルに付いていくよ」
ソル「解った。(階段を降り地下牢へ向かう。)……ギムレット。新しい隠し扉を見付けた。随分先が長くてな。もしかすると、もう戻って来ないかも知れない。お前はどうする?」
ベイユ「私は外には出ません」
ソル「…………そうかよ。解った。じゃあな。ベイユ。」
14 12/17(Sun) 13:11:57M
ベイユ「………(本を読みながら)…行ってらっしゃい。」
ベイユを置いてギムレットと二人で荷造りをするソル。
そして天井へ声をかける。
ソル「天井!俺に沢山の荷物が入るリュックと携帯食を寄越せ!ありったけの量だ!可能なら寝袋とかも欲しい!」
すると天井からリュックと携帯食と寝袋が落ちてきた。ソルはそれを背負う。ギムレットにも同じものをオーダーしてリュックを背負わせる。
ソル「行くぞ。ギムレット。」
ギムレット「(嬉しそうに)うん。行こう!ソル!」
そしてソルとギムレットは真っ暗の廊下の先を進んでいく…そして長い長いその廊下の先には沢山の食糧と水が置いてある部屋があった。
そしてそこには大量の宝石や貴金属等もあった。ソルはそれを見て、ここが財宝を保管する金庫のような部屋だと理解する。
ソル「食糧と水は良いけど…宝石はなあ……。」
そしてさらに探索すると、その部屋にも扉があり、扉を開いた先には、なんと大きな部屋があった。しかしそこにも財宝は一切なかった。
ただ、一枚の絵が飾られているだけだった。それは一人の少年が複数の女性に囲まれる様子を描いた肖像画だった。……ソルはそれを見て呟いた。
ソル「……これ、ギムレットに似てないか?」
金髪に金の瞳。今より幼いが明らかにそれはギムレットだ。
ソルはギムレットの方へ顔を向けると、ギムレットは泣いていた。そして絵を見ながらこう言った。
ギムレット「僕ね、お父さんから要らないって捨てられたんだ……。お母さんも死んじゃって……一人ぼっちなんだ……。」
ソル「ギムレット!記憶を思い出したのか!?」
ギムレット「僕は…この場所に閉じ込められた。そして、その時に何院かのメイドさんがいて、それがこの人だった。
……僕は、いいや……俺は、あの部屋の地下牢で生活していたんだ。」
ソル「……!?」
ギムレット「ソル、お前、俺の日記を読んだだろう?俺は、そうだ…この屋敷で暮らしていた。「アイツ」に世話されて。」
ソル「……アイツって誰だ?」
ギムレット「それが誰だったかは解らない。でも、俺に良くしてくれて、優しかった。……でも、ある日を境に急に態度が変わったんだ。……俺は地下牢に閉じ込められた……そしていつの間にか年月が過ぎた……」
ソル「……なあ、ギムレット。俺はこの場所から出たい。それは変わらない。だがギムレット、お前はどうしたい?(日記を差し出し)この日記を見た所、お前もここに閉じ込められて一度壊れた。…なあ、こんな所出て社会の中で生活したくはないか?」
ギムレット「(日記を受け取り、目を通し)……そうだ、俺は捨てられたんだ。母さんも死んじゃって……一人ぼっちだ……」
ソル「ギム、俺と外に出ないか?それともお前は過去に縋ってここに閉じこもって生活するのか?」
ギムレット「俺は…外の世界に憧れていた。でも、俺は捨てられたんだ。外の世界なんて知った所で意味は無い」
ソル「…そうか。じゃあ、俺が外に出る協力をしてくれないか?この建物について知ってることを教えてくれ!」
ギムレット「…俺も詳しい事は知らない。でも、ここは高さ8000メートルにもなる超巨大迷宮だ。正直、脱出は不可能だと思う。」
ソル「な…じゃあ、俺はどうしたら良いんだよ」
15 12/17(Sun) 13:13:13M
ギムレット「恋人さんのことは残念だけどさ、俺やベイユと一緒にここで暮らさないか?俺、お前やベイユの事気に入ってるんだよね。」
ソル「(溜息を吐くと)……それは無理。俺は外の美しい世界を見るんだ。」
ギムレット「……外の景色を見るだけなら出来ると思う。ただ、結構な距離だけど。」
ソル「…無理なのか?外に出るのは。」
ギムレット「ほぼ無理だと思う。俺の知る限りでは。…でも、ここは実は俺らだけじゃない。少し進んだ先には少ないけど人間もいるし、外の世界と変わらないエリアもある。普通に暮らしていくことは出来るぞ?」
ソル「(驚いて)本当か!?」
ギムレット「ついて来い。」
そしてギムレットについていくと、そこは外に出たと錯覚するような自然豊かな景色や集落があった。
ソル「……ここで、暮らす事も出来るのか?」
ギムレット「仕事とか通貨って概念はないから、空から落ちてくるものを待たなきゃいけないのは同じだけど、ある程度は自給自足出来るぞ。」
ソル「これは凄いな……。食糧も豊富にあるし、綺麗だ……」
ギムレット「勿論、ベイユがいるあの部屋に戻ってあそこで暮らす事もできる。」
ソル「なあ、俺たちに物資を落としてるのは誰だ?」
ギムレット「AIだよ。かつてメイドアンドロイドだった…あの肖像画に描かれた人達だな。あの人たちが俺らに物資を届けてくれる…最近少しポンコツにはなってるけどな。」
ソル「(驚く)……マジか」
ギムレット「ソル、どうする?それでも外の世界に出たい?それとも俺らと暮らす?」
ソル「(暫く考えて)……俺は、外の世界に出たい。だが、今はここで生活する事にするよ。…それに、やっぱりベイユが心配だ。」
ギムレット「…おう!」
そしてソルとギムレットはベイユのいる地下牢まで戻ってきた。
ソル「ベイユ、ただいま。」
ベイユ「…ソル!ギムレット、戻ってきたんですか?」
ソル「この場所の秘密が少しわかった。外には出れないが、ここより環境の良いところを見つけたよ。ベイユ、一緒にそこで暮らさないか?」
ベイユ「私はここで生きていきます」
ソル「なんでだよ。ここよりも向こうのほうが人も居るし、暮らしやすいぞ。お前の病気も少しは楽になるかも。」
ベイユ「それでも私はここにいます」ソル「なんでこの場所に拘るんだ?」
ベイユ「落ち着くんです。この地下牢。ここは、人の目を気にしないで本が読めるから。」
ソル「……そうか。わかった。じゃあ、俺もここで暮らす。」
ベイユ「(微笑んで)……そうしてください」
そしてソル、ベイユ、ギムレットはこの不思議な空間で暮らし続けた。
ソルは他の場所を探索しながら、たまにこの空間へ戻って来てベイユとギムレットと話したり遊んだりしながら楽しく暮らしていた。
ベイユは地下牢で本を読みながら、そして時々ソルとギムレットの帰りを待ちながら、一人静かに暮らしていた。
記憶を取り戻したギムレットは、今ではソルと仲良くなり、一緒に遊んだりもしていた。。
三人共少しづつ年齢を重ねていった。ちなみに三人の住む部屋は天井に様々な家具を貰い、三人が快適に過ごせるような部屋になっていた。
三人は毎日楽しく過ごしたが、それでもベイユは時折病気で寝込む日もあった。しかしソルとギムレットが看病し、回復していくのだった。
ソルは次第にこの生活が楽しくなっていった。
16 12/17(Sun) 13:13:56M
ちなみにギムレットの協力もあり、皆それぞれの部屋を持てる様になり、使わないものは大部屋を倉庫にして、キッチンも発見して皆で楽しく自由に暮らしていたが…。
ある日の事だった。三人の元に一人の少女が迷い込んで来た。
ルチア「え…ここは…何処…?」
ソル「気が付いたか。俺はソル。向こうで本を読んでるのがギムレットだ」
ルチアにこの建物の事について説明した後、問う。
ソル「ルチア、君はどうしたい?正直、この建物から出るのは難しいが、こうやって快適に生活は出来る。良ければ君を他の集落に保護する事も出来るぞ。」
ルチア「じゃあ、私はここで暮らしたい!」
ソル「いいのか?家族とか、いないのか?」
ルチア「うーん……多分、家族は居ないと思うけど。私、いつも一人で寂しかったから!それに皆といると楽しいし!」
ソル「そうか…。」
そして三人とルチアは次第に打ち解け、仲良くなっていく。
そしてルチアはソルとギムレットとベイユをとても気に入り、懐いていくのだった……。
しかし、ある日ソルは外の世界の手掛かりを発見する。
ソル「ベイユ、ギムレット、ルチア。…俺はやっぱり外に出たい。集落への聞き込みをして来たんだが、どうやらこの建物には「果て」と「穴」と呼ばれる場所があってそこへ行けば出られるかも知れないんだ。…俺は、旅に出るよ。」
ベイユ「そんな……。私はソルと一緒に居たいです!」
ソル「だけど、俺は外へ出たいんだ。悪い。ベイユ…。ギムレット、ルチア。お前らはどうする?」
ギムレット「俺も外へ出たい」
ソル「……ギムレット。気が変わったのか!?そうか。じゃあ俺と一緒に行こう。ギムレット。」
ギムレット「ああ」
ソル「ルチアはどうする?」
ルチア「皆が行くなら私も一緒に行きたい!」
ベイユ「………そうですか。わかりました……。私は残ります……。」
ソル「大丈夫か。お前……。」
ベイユ「ええ…。薬は貰えますし、一応これまでも元気にやれていましたから……。」
ベイユを残す不安はあったが、ソルはベイユだけを残してギムレットとルチアを連れて旅に出る事にした。
残ったベイユは一人、変わらず地下牢で本を読む生活を続けていた。
ベイユは病気で伏せる日も少なくはなく、ベッドに横になる事も多かったが……。
それでもソル達の帰りを想像しながら暮らしていたのだった。
一方のソルはギムレットとルチアと共に「果て」と「穴」を目指し旅に出た。道行く人達に聞き込みをしながら旅を続ける。
途中、様々な困難も乗り越えながら……。そして遂にソル達はその果てと穴がある場所に辿り着いたのだった……。
ソル「ここは……そうか、ここが……。ありがとう。俺はこれで外の世界へ行ける!」
ギムレット「そうだな……。でも、俺はやっぱりここに残りたいかな」
ソル「ええっ!?な、何だよ今更…。」
ギムレット「旅をして思った。俺はやっぱりここが好きだし、外に出たからと言って幸せになれるとは限らない。」
ソル「それはそうだが………ルチアはどうする?」
ルチア「私もギムレットに付いていくよ。……だって、ここの皆のこと大好きだし」
ソル「そうか。じゃあ、ここでお別れだな。ギムレット、ルチア、今まで有難う。お前等はベイユの所に戻るのか?それとも他の所で暮らすのか?」
17 12/17(Sun) 13:14:27M
ギムレット「ああ、俺達は適当な町で暮らすよ。」
ソル「そうか…じゃあな!(穴の中へ入っていく。)」
壁に開いた穴の中へと入っていったソルが辿り着いた先は、なんとソルの元いた街の自然公園だった!ソルは驚愕する。まさかこんな所に繋がっているとは……。
と、同時に穴が固く閉ざされて煉瓦造りの壁に戻ってしまった。何度叩いても無理だ。
そして、ソルは急いで自宅へと戻り、メリッサへと会いに行く。
ソル「メリッ…………え?」
そこにいたのはメリッサと、見知らぬ男と子供達だった。
ソルは行方不明になって6年の月日が経っており、その間にメリッサは結婚して子供も作っていたのだった…。
ソル「あ……ああ……メリッサ…メリッ……。ど、どうして……」
メリッサ「ソル!……一体今まで何処に行っていたの!?心配したのよ…!私は、ごめんなさい。貴方を待てずに結婚してしまったわ…。」
ソル「メリッサ……。ごめん……。俺は、……俺はああああああああ!!!!!!!!!」
ソルはその場で号泣し、メリッサはそんなソルを抱きしめるのだった……。
そしてメリッサとソルは寄り添いながら、互いにこれまでの事や、会っていなかった間の事を語り合うのであった……。
ソル「……君が結婚して、子供もいたのは責めないよ。仕方が無い事だと思う……。だけど、俺はこの街を出る。この事実に耐えられそうにないから。」
メリッサ「そう……。私も貴方を責めないわ。仕方の無い事だもの。それに、この街を出て何処に行くの?」
ソル「俺が暮らしていた場所に戻ろうと思う。無理かも知れないけど、無理じゃないかも知れないから、俺を愛してくれた奴等の元へと戻りたい。」
メリッサ「ソル……。」
そしてソルは、再び自然公園へと戻り自分が暮らしていたあの謎の建物の場所へ戻ろうとするが、穴は固く閉ざされていて開きそうにない。
どうやらあの場所へはもう行けないようだった……。
だが、諦めないソルは次の手段を考える。そして彼は、再び旅に出る決意をするのであった……。
…一方、ソル達を見送り部屋に残ったベイユは地下牢で毎日本を読む生活を続けていた。ベイユは寂しそうに本を読みながら、日々を過ごしていたのだった……。
そしてソルがいなくなってから1年が経過したが、それでもベイユは一人暮らし続けていた。
病気でたまに体調を崩すがそれでも、本と可愛い服があれば幸せだった。
ベイユはこの部屋が、この謎の牢獄の中が好きだ。
何故ならベイユは男性で生まれながら性同一性障害で心は女性なのだ。
だから、女性扱いする様に服を求めると女性ものの服をくれるこの天井のアンドロイドが好きだった。
ここでは自分らしく居られた。
だから今日も女性の服を着て、好きな本を読んで、過ごす。そんな毎日がベイユにとって幸せだった……。
1年後、ソル達は帰って来なかった。2年目は流石に独りに少し不安になったが、それでもベイユはここでの生活を続けていたのだった。
ベイユ「天井さん、面白い本をください。出来れば恋愛小説が良いです。」
天井に向かってそう言うと上から本が落ちて来る。
本の内容は多種多様で、様々なジャンルの恋愛小説が降ってきた。それを読んで読むと幸せな気分になれるし、孤独なこの日々に夢や希望が持てた。
さらに、
18 12/17(Sun) 13:16:52M
ベイユ「ご飯も用意してくれませんか。今日は元気で食欲もあるからお肉が食べたいです。ステーキとか。」
天井に向かってそう言うと袋詰めの肉が落ちて来た。それを火で焼いて食べるのであった……。
3年目も、ソル達は帰って来なかった……。別に期待している訳じゃない。元より帰って来るつもり等無いのだろうから。
……今日もベイユは地下牢で本を読み、好きな本を楽しみながら、孤独に生活を続けるのだった……。
4年目はソル達は帰って来なかった。
次第に薬の効きが悪くなっていた。血を吐く事も多くなっていた。しかし、それでもベイユはここでの生活を続けていたのだった……。
5年目もソル達は帰って来なかった。
暗くじめじめした地下牢で居るのが辛くなり、温かい部屋へと上がって寝込んでいる事が多くなった。
6年目のある日の事……。遂に、天井が外れた!天井に穴が空いた!天井から光が差し込む!!
何が起こったのか解らず慌てて飛び起きるが、そこから現れたのはソルだった。彼は再びここへやって来たのだった。
ソル「い、いてて……。」
ベイユ「そ、ソル!?貴方、戻って来たんですか!?」
ソル「一回外に出たんだけどな…。まあいろいろあって戻って来たよ。時間は掛かったけど…。」
ベイユ「そうですか……。おかえりなさい、ソル!(ああ、そうか。私は…ソルの事が……。)」
そうだ。ベイユはソルを愛していた。
だが、自分は心が女と言うだけの男だ。ソルは女性が好きなのだ。そう思い、自分の気持ちを隠していた。でも本当は……。本当はずっと、ソルと一緒にいたいと思っていたのだった。
だから……今こそ告白の時!そう決意してベイユはソルに話し掛けるのであった……。
ベイユ「ソル、今から言う事は貴方を不快にさせるかも知れません。…でも…でも聞いてください。」
ソル「え……。」
ベイユ「私は、貴方の事が……ソルの事が好きです。大好きです。貴方には女性が好きな事は解っていますし、私にもそれは解っています。でも、それでも私は貴方が好きです!!」
ソル「……お前が、ただの男じゃない事は解ってたよ。お前はずっと女の服ばっかり着てよ。……でも、俺の事が好きだった…のか?」
ベイユ「はい……。私は貴方が好きです。愛しています……」
ソル「俺は、男同士とか解らない。でも、友達から…改めてやり直さないか?」
ベイユ「……!……はい!喜んで!」
ソル「ところで…この世界に戻るために天井の穴開けちまった。……なあ、ここ以外の何処かに、今度こそ二人で行かないか?多分、ギムレットとルチアが居る所とかさ。」
ベイユ「そうですね。今度は私も、貴方と一緒に行きたいです!」
そしてソルとベイユは二人で暮らして居た部屋を出て、旅に出る。そして今度は、二人で旅をしてギムレットとルチアの居る街を目指す。
そんな幸せな生活を送るのであった……。
6年の歳月を経て、ベイユは死ぬが、それはソルにとって悲しみではない。
ベイユはソルの心の中で生き続けるから……。
それからソルは一人、ギムレットとルチアのいる街を目指し、旅をする。
途中、怪我をして倒れてしまうが、それでも旅を諦めずに歩き続けるのであった……。そして遂にソルは街へと辿り着く。
久々に出会ったギムレットとルチアは結婚していてしばらく二人の家で世話になる事にした。
ソル「ベイユは、途中で死んだよ。病気が侵攻していたらしくてな……。」
ギムレット「そうか……。それで、これからお前はどうするんだ?」
ソル「もう、旅をする必要は無いのかも知れない。俺は……ここに残りたいな……」
ルチア「何言ってるの。私達はずっとここに居るのよ。これからも、ここで暮らしましょう。」
ソル「ああ……。そうだな……」
そしてソルはこの街で暮らす事になり、ギムレットとルチアと共に幸せな生活を送るのであった……。
7年が経った……。ある日の事、ソルはベッドで寝ていたら不意に体が痒くなった!
……死んだベイユが呼んでいるのだ。何故かそう思ったソルは、再び旅に出る決意をするのだった!
旅に出たソルが真っ先に向かったのは地下牢のあるあの部屋だ。
久々に来たこの場所はボロボロに荒れ果てていてギムレットの肖像画も落書き塗れになっていた。
そんな部屋をうろうろしていると…そこに一人の少女が佇んでいた。
ソル「……君は………。」
長い黒髪に白いワンピースを着たその少女は、何処となくベイユに似ていた。ソルは彼女に話し掛けるのであった……。
ソル「君は、…名前は?」
メリル「あたしは……メリル」
ソル「メリルか……。君は何処から来たんだい?」
メリル「あたしは……死んだベイユなの」
ソル「え!?」
メリル「……信じられない?信じられないわよね。でも、あたしはベイユなの。死んだ後、生き返ったのよ」
ソル「………念願の女になったのか?」
メリル「いいえ、あたしはあたし。見た目は女になったけど、心は変わらないわ。…気付いたの。結局男だ女だに肉体は関係無かったのね。心次第で、人は自由に生きられる。」
ソル「そうか……」
メリル「何?その反応…。私が生き返って嬉しくないの?」
ソル「いや……嬉しいさ。でも、俺はベイユの事が友達として好きだったんだ。君が女になったからって、君はベイユじゃないし生き返った訳でもない。君はメリルだ。ベイユじゃない。」
メリル「ええ、そうね。あたしはメリルよ。それで貴方は?ソル?」
ソル「俺…?」
メリル「貴方は、誰なの?貴方は、何なの?」
ソル「俺は…分からない。自分が何者なのか分からないんだ。俺は一体……何なんだろうな……。何がしたくて、何のために、ここに戻って来たんだろうか?」
メリル「自分の存在に疑問を持ってるんだ。だったらさ、私が貴方の存在理由になってあげる」
ソル「な…なにを?」
メリル「あたしが貴方を愛してあげる。あたしの生きる意味は貴方よ」
ソル「俺を……愛してくれるのか……?」
メリル「うん、貴方の事が好きだから。ずっと……貴方に愛されて生きていきたい」
ソル「俺も……メリルと一緒に居たいよ」
メリル「嬉しい…。好きよ、ソル。」
そして二人はキスを交わし結ばれる。
……だが、目が覚めるとソルは部屋の壁で眠っており、そこには誰もいなかった。
そう、メリルはソルが見ていた夢の存在だった…。
しかしソルは悲しくなかった。やはり、ベイユは自分の心の中に居たのだ。
メリルはベイユが女性になった存在として考える様になった。
ソルはベイユと暮らしていたこの部屋で小説を書き始めた。
「メリル」と言う名前の夢の中のベイユの生まれ変わりが登場する物語だ。
19 12/17(Sun) 13:17:42M
2年後、ソルは小説家として大成していた。そしてある日の事、ソルはギムレットとルチアの居る街までやって来た。
ギムレット「ソル!凄いじゃないか!有名作家になったんだってな!」
ソル「ああ……。ありがとう」
ギムレット「またあの部屋で暮らしてるんだってな。…また俺達と暮らさないか?こっちの方が何かと便利だろ?」
ソル「それも悪くないけど、俺はあそこが気に入ってるんだ。……ところでルチアは?」
ギムレット「ああ、ルチアは仕事で出掛けてるよ」
ソル「何の仕事してるんだ?」
ギムレット「新聞記者だよ。色んなところに行って、その街の情報を記事にしてるんだ。…多分、ソルの影響だろうな。アイツ、ソルの話聞くのが好きだったから。」
ソル「はは、あいつらしいな」
ギムレット「俺も今は忙しいけど早く終わらせるよ。そしたら皆で旅行にでも行こうぜ!」
ソル「いいな。ところでギムレットはどんな仕事をしてるんだ?
ギムレット「俺は今、自警団の団員さ。」
ソル「そうか。大変だな。皆今は忙しいけど、また三人で会おう。」
ギムレット「ああ!」
そしてソルとギムレットとルチアは友人として末永く幸せに暮らしたとさ。めでたしめでたし。

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